本文 1


□大人の男
2ページ/5ページ


夜空に浮かぶ艇に2人は乗りこむと、オーナーらしき男が現れた。

「ようこそ。話は聞いてるよ。」

「ありがとうございます。俺みたいな一介のチンピラを、ご招待いただけるなんて申し訳ないです。でも、こちらは随分と評判なので、一度拝見したいと思ってました。ツレが同行を許可してくれて感謝してます。」

「ほぅ、なかなかとお美しい方だ。」

銀時は話を急にふられ、驚いたが愛想笑いをしてごまかした。

「まぁ、立ち話もなんだから、まずはゆっくり食事でもとってくれたまえ。」


「はい、そのように。」

近藤は悠然と微笑み、そう返した。


いつもとキャラちがわなくねー!?ゴリラ。
なんか大人の男じゃね!?


銀時は、なれない雰囲気と、いつにないゴリラの大人っぷりに驚かされた。



コイツ、バカなフリして本当は…。


不意に眼が合い、銀時はドキリとする。
そんな銀時をよそに近藤は近づき、銀時の腰に手を回すと笑顔を見せた。


「じゃあ、行こうか。」


「若い2人のために、とびきりのおもてなしをさせてもらうよ。さぁ、どうぞ。」


胡散臭い笑顔が鼻につく野郎だぜ。
銀時に嫌悪感が走った。


2人は艇内の最上階にあるラウンジに通された。
眼の前には贅沢の極みとも言えるディナーが鎮座している。


「では、ごゆるりと。」





オーナーが去ると、銀時は慌てて近藤を見た。

「ちょ、ゴリラ!こんな豪華ディナー食べて、払い大丈夫なのか!?」


近藤はグラスに注がれた水に口をつけ、口の端をあげる。


「俺の払いだから、心配しないで銀さん。せっかくだから楽しんでいこうよ。」

上目遣いに見られると、銀時は言葉につまった。


どこまでが演技?



そうこうしていると、1人のウェイターが近づいてきた。


「オーナーよりこちらのワインをお持ちしました。どうぞ。」


ウェイターは近藤の別のグラスにワインを注ぐ。


「ザキ、状況は?」


突然の呟きに、銀時は肉を頬張りながら近藤を見た。

「カメラはありますが、盗聴器はありません。」



傍から聞こえるその声に銀時はさらに驚き、ウェイターを見る。


あ、ジミー。


「素敵なラウンジだね。ここから見る地上も格別だ。しかし俺はトシだし、心配性でね、飛空艇には慣れてないから心配で…なんかあったら無事に地上につけるんだろうね。」


何、言ってんだ、当たり前だろ!

「お客様、ご安心ください。地上との連携もとれておりますので、安全管理は充分できております。」


山崎と近藤はアイコンタクトをする。

「そっか、それならいいけど。あと、今日は恐らくこちらに泊まることになるんだけど…俺暑がりだから空調とかの設備はどう?暑くて一番にオキタりすんのヤなんだよねー。」


何をわけのわからんことを聞くんだ、このゴリラは?

「あ、それでしたらすべての階の通気孔は毎日清掃し、清掃係のものが監視しておりますので大丈夫ですよ。いつでもお好みの温度にできるようになっております。」


近藤と山崎はまたアイコンタクトをする。


「そっ、ならよかった。ありがとう、何かあったらまた頼むよ。」

「はい、いつなりとお呼びください。」


山崎は退がっていった。


「い、勲さんは変わったことをお店の方に聞くのね。」

銀時はひきつった笑顔をつくりながら、近藤に問う。


「そう?大切な確認だと思うんだけど…。」


どう大事なんだよ?







しばらく食事を楽しんでいると、山崎とオーナーが近づいてきた。

「よかったら、カジノへそろそろどうかね?」


近藤はチラリと銀時を見た。
2人とも食事は済んでいる。
近藤の視線の意図はわからないが、銀時は優しく微笑んだ。


「じゃあ、そうします。」

2人は、艇内のカジノへ移動した。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ