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□大人の男
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夜空に浮かぶ艇に2人は乗りこむと、オーナーらしき男が現れた。
「ようこそ。話は聞いてるよ。」
「ありがとうございます。俺みたいな一介のチンピラを、ご招待いただけるなんて申し訳ないです。でも、こちらは随分と評判なので、一度拝見したいと思ってました。ツレが同行を許可してくれて感謝してます。」
「ほぅ、なかなかとお美しい方だ。」
銀時は話を急にふられ、驚いたが愛想笑いをしてごまかした。
「まぁ、立ち話もなんだから、まずはゆっくり食事でもとってくれたまえ。」
「はい、そのように。」
近藤は悠然と微笑み、そう返した。
いつもとキャラちがわなくねー!?ゴリラ。
なんか大人の男じゃね!?
銀時は、なれない雰囲気と、いつにないゴリラの大人っぷりに驚かされた。
コイツ、バカなフリして本当は…。
不意に眼が合い、銀時はドキリとする。
そんな銀時をよそに近藤は近づき、銀時の腰に手を回すと笑顔を見せた。
「じゃあ、行こうか。」
「若い2人のために、とびきりのおもてなしをさせてもらうよ。さぁ、どうぞ。」
胡散臭い笑顔が鼻につく野郎だぜ。
銀時に嫌悪感が走った。
2人は艇内の最上階にあるラウンジに通された。
眼の前には贅沢の極みとも言えるディナーが鎮座している。
「では、ごゆるりと。」
オーナーが去ると、銀時は慌てて近藤を見た。
「ちょ、ゴリラ!こんな豪華ディナー食べて、払い大丈夫なのか!?」
近藤はグラスに注がれた水に口をつけ、口の端をあげる。
「俺の払いだから、心配しないで銀さん。せっかくだから楽しんでいこうよ。」
上目遣いに見られると、銀時は言葉につまった。
どこまでが演技?
そうこうしていると、1人のウェイターが近づいてきた。
「オーナーよりこちらのワインをお持ちしました。どうぞ。」
ウェイターは近藤の別のグラスにワインを注ぐ。
「ザキ、状況は?」
突然の呟きに、銀時は肉を頬張りながら近藤を見た。
「カメラはありますが、盗聴器はありません。」
傍から聞こえるその声に銀時はさらに驚き、ウェイターを見る。
あ、ジミー。
「素敵なラウンジだね。ここから見る地上も格別だ。しかし俺はトシだし、心配性でね、飛空艇には慣れてないから心配で…なんかあったら無事に地上につけるんだろうね。」
何、言ってんだ、当たり前だろ!
「お客様、ご安心ください。地上との連携もとれておりますので、安全管理は充分できております。」
山崎と近藤はアイコンタクトをする。
「そっか、それならいいけど。あと、今日は恐らくこちらに泊まることになるんだけど…俺暑がりだから空調とかの設備はどう?暑くて一番にオキタりすんのヤなんだよねー。」
何をわけのわからんことを聞くんだ、このゴリラは?
「あ、それでしたらすべての階の通気孔は毎日清掃し、清掃係のものが監視しておりますので大丈夫ですよ。いつでもお好みの温度にできるようになっております。」
近藤と山崎はまたアイコンタクトをする。
「そっ、ならよかった。ありがとう、何かあったらまた頼むよ。」
「はい、いつなりとお呼びください。」
山崎は退がっていった。
「い、勲さんは変わったことをお店の方に聞くのね。」
銀時はひきつった笑顔をつくりながら、近藤に問う。
「そう?大切な確認だと思うんだけど…。」
どう大事なんだよ?
しばらく食事を楽しんでいると、山崎とオーナーが近づいてきた。
「よかったら、カジノへそろそろどうかね?」
近藤はチラリと銀時を見た。
2人とも食事は済んでいる。
近藤の視線の意図はわからないが、銀時は優しく微笑んだ。
「じゃあ、そうします。」
2人は、艇内のカジノへ移動した。