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□約束
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「ズルいよ…。」
「え?」
「いつも、当たり前の「好き」だから、どんなに好きかわかんないし、私もアマノジャクだから意地になっちゃうし…。」
「妙ちゃん?」
「素直になれないじゃない。何よ、自分はいい人ぶって色んなこと勝手にどんどん決めちゃってさ、自己満足してさ!」
また涙が溢れ、落ちる。
「何よ、何よ!結局私がかわいくない女だから、悪者みたいになるじゃない!」
「な、何だよ、急に!だって妙ちゃんが、俺のこと邪魔だ、みたいに言うから俺なりに考えたし、区切りつけようとしたのにさ、その言い方はあんまりだろ!」
「バカのくせにゴタゴタ難しいこと言って、考えなくてもいーのよ!」
「バカとは、何だよ!ワガママ女!」
「言ったわねー、クソゴリラ!アンタなんか県外でもどこでも行っちゃいなさいよ、もう二度と私の眼の前に現れないで。」
「いいよーだ、お前みたいな凶暴女、誰も相手にしちゃくれねーよ。後で後悔しても知らねーからな!」
2人して屋上で、子供のケンカを一通り繰り広げた。
しばらくして罵るセリフも尽きたため、2人は無言になった。
「ごめんなさい。私、遠くへ行かれるのも、誰かの物になるのもイヤなの。」
「た、妙ちゃん?」
「私、勲兄が好き。」
「ほ、ほんと?」
「うん。ほんと。」
勲兄の眼が潤んだ。
でも次の瞬間、彼は真面目な顔を作る。
「ありがと…でも…俺、やっぱ県外に行くよ。」
「え、なんで?」
「妙ちゃんにそこまで言われて、有頂天だし、離れたくないけど…それなら余計におじさんとの約束、守らないと…。いろんな意味で成長したいんだ。」
その自信溢れる表情を見て、私は安堵した。
あなたは私を守るために次のステージへ向かっているのね。
「うん、わかった。私こそ、大人げないこと言ってごめん。」
「妙ちゃん…俺のこと、待っててもらえる?」
「うん、待てる間はね。」
私は笑顔を向けて言ってやった。
勲兄はまた苦笑いした。
でも新しい約束を取り付け、私たちは次のステージへ成長していく。