短編集
□crystal sweet
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その日も快晴だった。
日影に居ても肌が焼かれそうな熱い日差し。
暑いのは苦手なのに、なぜか『ガーデン・パーティ』なるものに参加している僕。
理由は単純。
こないだの埋め合わせだ。
「…聖!こっちよ!」
淡いブルーのドレスに身を包んだ、菜々子が僕を呼ぶ。
「ほら、ちゃんとご挨拶して」
呼ばれた先には彼女の叔母がいて。
「こんにちは、真砂子さん。今日はお招きありがとうございます」
妙齢の美女に僕は深々と頭を下げた。
菜々子の親戚は、さすがに美人揃いなのだ。
「ええ、こんにちは。お久しぶりね、聖。菜々子からいつも噂は聞いているけれど、相変わらずなんですって?」
「はぁ、まぁ…」
余所行きの笑顔を浮かべたまま、僕は言葉を濁した。
何が相変わらずなのか。
見当がつかなかったのだ。
「そうよ、本当にモテモテなの。ちょっと目を離すと、他の子が寄ってくるんだから」
菜々子は笑う。
僕の腕に腕を絡めながら。
「しっかり見張っていなくちゃ駄目よ?菜々子」
「ええ」
意味有りげに微笑み合う二人。
「…ああ、ちょっと失礼するわね。お友達が来たみたい」
真砂子さんが新たなゲストに気付く。
薔薇の生花で飾られた緑のアーチ。
それをくぐって一組の老夫婦が現れたのだ。
「‐そうそう、聖…」
彼らの方へ行きかけながら、彼女は僕を振り返った。
「今年の避暑は、私の義妹(いもうと)達も一緒なの。あなた達位の子供を連れて来ているから、仲良くしてやって頂戴ね」
彼女は笑った。
「ええ、分かりました。任せておいて下さい」
そこで僕も微笑み返す。
「でも、女の子の方には仲良くなり過ぎちゃ駄目よ?不機嫌な菜々子は、ほんと手に負えないんだから」
声を立てて笑い、真砂子さんは去って行った。
「…上出来の笑顔よ、聖」
彼女がいなくなると。
菜々子が僕の頬に手を当てた。
「じゃあ、もう帰ってもいいかな?」
ひんやりとした彼女の手に僕は手を重ねる。
「何言ってるのよ。パーティはこれからなのよ?」
「冗談だよ…とりあえず、日影に行かない?」
庭の端の木陰に置かれた幾つかのテーブルに目をやる。
「いいわよ。何か飲み物を取って来てくれるなら」
「了解。いつものでいいね?」
僕は手を外した。
「ええ。じゃあ私は先に座ってるわ」
ひらひらと裾をなびかせて。
菜々子は行ってしまった。