Novel

□永遠の先まで
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あんたは・・・私を孤独から救ってくれた。
あんたは・・・私にとってなくてはならない人。

あんたがいてくれたから、私は前を向くことができた。
今までも、そして、これからも・・・あんたはあたしの大切な大切な、
世界で1番の、宝物。













12月24日。

今日は、チョッパーの誕生日。


私たちの船に乗って、初めて迎える誕生日だ。




チョッパーに気づかれないよう、みんなで内緒に準備をすすめていたかいあって、
チョッパーは号泣しながら「う・・・嬉しくねェぞコノヤロー!!うわああん!」と、
とっても喜んでくれていた。



サンジ君特製の、桜のクリームを使った淡いピンク色のケーキは
ドラムで咲いた桜を思い出させた。

あの日・・・チョッパーと出会うことができて、
本当によかったと思う。


でなかったら、私はおそらくいま生きていないわけだし・・・
って考えると、ちょっと怖いけど。



嬉しそうに顔をくしゃくしゃにしているチョッパーは、とっても可愛くて、
見ているこっちまで幸せな気分になった。

きっと、他のクルーたちも同じ気分だろう。









ゾロが騒ぎ疲れてうとうとしはじめたルフィとウソップを部屋へ引っ張っていき、
私とロビンとサンジ君はキッチンの後片付けを始めた。





「あとはおれに任せて、レディは休んでください!」
というサンジ君の言葉に甘えて、外に出てみると、

「わっ・・・」

雪が降っていた。


雪国に降るような大粒の雪とは、少し違う。

はらはらと降る、儚くて、どこか寂しい粒。



「積もることはなさそうだけど・・・冷える前に休んだほうがいいわね」


「うん・・・あっ!私、みかん畑が心配だから見てくる!ロビンは先に休んでて!」




みかんや葉にうっすら積もった雪を払い、
これくらいなら大丈夫と安心して女部屋に戻ろうとすると、
船尾のほうに小さな後姿が見えた。




近づいてみると、そこには―――――

「・・・チョッパー?寝たんじゃなかったの?」

「・・・うん。なんだか、眠れないんだ」



さっきまでとは打って変わって、沈んだ表情をしたチョッパーがいた。

それがすごく気になって、私はチョッパーの隣に座った。


しばらくのあいだ、静かに降りしきる雪を眺めながら、
チョッパーが口を開くのを待っていた。






「・・・なあ、ナミ」

チョッパーが、うつむいたまま言った。

「なあに?」


「ナミの・・・母さんって、どんな人だった?」



チョッパーの言葉に、はっとした。


彼の、沈んだ顔のわけがわかった気がした。




「・・・私ね、本当の親の顔は知らないの。戦災孤児だから」


そう言うと、チョッパーは驚いたように顔を上げた。


「そ、そうだったのか!?・・・ごめん、ごめんなナミ!おれ・・・」


「いいのよ」


優しく、笑いかける。




「私にとってのお母さんはね・・・ベルメールさん。血はつながってないけど、私のこと、たくさん愛してくれた人。私、孤児であることを悲しんだことなんて一度もないわ。いつも、家族がそばにいてくれたから・・・・・」




そう言うと、チョッパーはうつむき、ためらいがちに口を開いた。


「おれ・・・母さんのこと、なんにも覚えてないんだ。母さんが誰かも知らない・・・いつも群れの最後を、1人で歩いてたから・・・」


「でも・・・今日はおれが産まれた日で、おれがいまここに生きてるってことは、母さんがおれを産んだ日でもあるってことなんだよなって・・・・・」



「なあ、ナミ。おれ、こんな鼻じゃなかったら・・・もっと立派なトナカイに産まれてたら、母さんはおれのこと、捨てないでくれたかな?愛してくれたのかな・・・?」




そう言うチョッパーの顔は、普段からは想像もできないほど悲しみにゆがんでいた。


今日は、この子の誕生日なのに。




そんなチョッパーが切なくて、いたたまれなくて、私はそっと腕を伸ばし、小さな体を抱きしめた。



「チョッパー・・・ごめんね。私は、あんたを産んだお母さんになってあげることはできないし、あんたの今までの苦しみを、消してあげることだってできないわ・・・」


「・・・うん・・・」





「でもね」

私は、チョッパーの目を見つめながら言った。


「家族には、なれるわ。これから、私たちがずっといっしょにいるわ」



「ナ、ナミ・・・」


「これからずっといっしょに、冒険しましょう。あんたを1人になんて、絶対にしないわ。私たちは、仲間で、家族なんだもの。それじゃ、だめかしら?」



私がそう言うと、チョッパーは顔をくしゃくしゃにして、まんまるの目があっという間に涙に濡れた。



「・・・・・うう〜っ・・・ナミ、ナミ〜!!!」



ぎゅっと抱きつきながら、わあわあと泣くチョッパーがどうしようもなく愛しくて、
私はそっと頭を撫でた。



「・・ひっく・・・ぐすっ・・・・・お、おれ・・・みんなに出会えて、よかった・・・」


「うん」


「あ、あの日・・・ドラムでルフィとナミに出会えて・・・よかった・・・・」


「うん」



「・・・ぐすっ・・・うう・・・・・あのとき、ルフィがおれを誘ってくれなかったら・・・」



「・・・うん」


「・・・ひっく・・・・・ルフィが、おれを見つけてくれて・・・よかったあ〜!!!」




「・・・当たり前じゃない。あいつは、宝物を探すのが世界一うまいんだから」

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