Novel

□シアワセの香り
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どうしようもないくらい勝手で、

どうしようもないくらいバカで。


でも、それでもいいの。



あんたがどんなに勝手でも、バカでも、いいの。

私のためになにもしてくれなくたって、いいの。



そばにいてくれる。


それだけで、いいの――――――――

















静かな夜だった。


窓から差し込む月明かり。

聞こえてくる波の音。




ここ最近の航海で疲弊した体を休めるには、申し分ないシチュエーションといえた。






・・・・・あの足音が聞こえるまでは。


(ダダダダダダッ!!!)




ドタドタと走る音だけで、それが誰の足音かすぐわかる。


この部屋を目指してるんだろうってことも。



私は、大きくため息をついた・・・・・・






バンッ!!!!




「ナミー!!起きてっかー!?」



いつもどおり、ノックもせずに部屋に入ってきたのは
ルフィ。




「寝てても起きるわよ。そんな騒がしくされたらね」



「しししっそーか!!」


ルフィは満面の笑みでそう言って、ドカッっとソファに座った。




「いや、いまの皮肉なんだけど・・・って通じるわけないか」



私は書き途中だった航海日誌を閉じると、ルフィに向き直った。





「で?何か用なの?」



そう聞いたけど、ルフィはただニコニコ笑ってるだけ。




「・・・・・なによ?」



「もーちょっと待っててくれ!!」




「・・・??いったいなんなのよ?」


「いいから!待ってろ!!」




ルフィにそう言われ、しかたなく黙っていることにした。



でも・・・待ってろって、なにしてればいいのよ?


日誌の続きを書こうにも、ニコニコしてるルフィを前にしちゃ
なんか書きづらいし・・・・・・






とりあえず、手近にあった本を開き、ページをめくってみる。


でも・・・正直、ルフィが気になって、内容が全然頭に入ってこない。





チラッと横目でルフィを見やると、なにやら一心になにかを見つめている。


目線の先を追ってみると・・・・・

どうやら、時計を見ているらしい。




(なんで時計を・・・欲しいのかしら?)


まったく意味がわからないけど、聞いたらまた「いいから待ってろ!」と
言われそうだから黙っていた。





(もう・・・いったいなんなのよ・・・・・・)




そろそろ沈黙に耐え切れない、と思っていると

急にルフィが声を上げた。





「10!!」




「・・・はっ!?」



私は心臓が跳ね上がるくらいびっくりした。




「9!8・・・・・」




「ル、ルフィ・・・?」



私の問いかけなどはまったく無視して、声をあげるルフィ。


いったいなんなの・・・??




「5!4!3!2!1!」







「ゼロ!!!・・・ナミ!!」




そう言うと同時に、ルフィがガバッと私を抱きしめた。




「!!??え・・・なに!?///」


急に抱きしめられて、私はパニック寸前だった。



すると、ルフィは私から体を離し、まっすぐに私の目を見て言った。




「誕生日おめでとう!!ナミ!!!」


と――――――――








誕生日・・・・・


そっか、今日だったっけ・・・・・・・



「忘れてた・・・・」


私がポツリとそう言うと、ルフィはニカッと笑った。




「ナミがいくら忘れててもだいじょぶだぞ!代わりにおれが、ずーっと忘れねェからな!!」



「・・・!!///」



「おれ、ナミが生まれてきてくれて、すっげーうれしい!」


「ルフィ・・・・・・」




「だから、誰よりも1番最初におめでとうって言いたかったんだ!!」



そっか、それで・・・




「だから、さっきから時計とにらめっこしてたの?」


「おう!最初に言いたかったからな!!」



そう言って、私の大好きな、太陽のような笑顔で笑う。




その瞬間、私はなんとも言えないような気持ちが込み上げてくるのを感じた。


ありがとうとか、嬉しいとか、そんな言葉を言うべきなんだろうけど。



代わりに、涙が溢れていた。


泣きたいくらいに人を好きになるなんて、そんなこと、絶対自分には起こりえないって思ってた。




「な、なんで泣くんだナミ!?」


私の涙を見て、慌てふためくルフィ。



ごしごしと、少し乱暴なくらいに私の頬をこする。


「おれ、なんかナミを泣かせるようなこと言ったか!?」



「ううん・・・違うの・・・・・」


「じゃ、なんでだ!?」





ルフィの笑った顔見てたら・・・なんか胸がぎゅっと締め付けられて、切なくなるほどの愛おしさが込み上げてきて、
それで勝手に涙が出ちゃったなんて・・・・・・


本人を前にして、言えるわけない。





「ごめん・・・うれしくて・・・・・・ありがとう、ルフィ」



それだけ言うのが精一杯で、私はルフィの胸に顔をうずめた。



「そーか!よかった!!」


そう言って、また強く抱きしめてくれる。






ルフィの腕の中は、私がこの世で1番安心できる場所。



太陽のような香り。

体中で感じる体温。

心地いい鼓動のリズム。




このまま、彼の胸にしまい込まれてしまいたいくらい。



いつまでも、いつまでも酔いしれていたい―――――――










「なあ、ナミ」


「・・・ん?なに」



ルフィは、ごそごそとポケットを探り、何かの物体を取り出した。



「これやる!」


「・・・え、なにコレ?」





「たんじょーびプレゼントだ!!!」


自信満々と言った笑みを浮かべ、そう答えるルフィ。




い、いや・・・ちょっと待って。



「ルフィ・・・この白・・・ってかところどころ灰色の物体はなに?」



粘土をこねて造ったもの・・・なんだろうなってことはわかる。

でも、わかるのはそれくらい。。。




「なんだ、ナミわかんねェのかー?」



これでわかるやつがいたらすごすぎる。





「え、ええっと・・・山、かしら。それとも・・・モグラ?」




「お前失敬だな!!これはな、“うさぎ”だ!!!!(ど―――ん!)」



・・・は?


「う、うさぎ・・・・・??」


「そうだぞ!ほら、ここに耳があるだろ!!」



ああ・・・・これって耳だったんだ。

そのあまりにも微妙な突起を見て、ようやく納得がいった。





「でも、なんで・・・・・・」


“なんでうさぎなの?”と口に出そうと思った瞬間、思い出したことがあった。








あれは、数日前に立ち寄った島でのこと。





私とルフィは、2人で買い物をしていた。


道中、私はペットショップのショーケースの前で足を止めた。



「ねぇ、見てルフィ!あのこかわいい!」


「ん?どれだ?」


「あの、真っ白なうさぎよ!」


「ナミって、うさぎが好きなのか?」


「そうよ、だってかわいいじゃない!」



「ふーん・・・・」


「毛もつやつやしててきれい・・・・・ホントにかわいいわ!」



「なー、ナミ」


「なに?」



「うさぎの肉ってうめェのかな?」




バキッ!!!!!!



「張り倒すわよアンタ!!!!!!」


「いってェ〜!!もう殴ってるじゃねェか!!」



「うっさい!もう1回言ったら歯折るわよ!!!!!!」











思い出した・・・・・



もしかして、あれを覚えてくれてたの・・・?


「ル、ルフィ・・・」


「ん?」



「これ・・・このあいだ、私がうさぎ好きだって言ったから・・・・・?」



「おう、そうだぞ!ウソップに粘土もらって作ったんだ!!」





その“うさぎ”は、形もぐちゃぐちゃで、色塗りもへたくそで。


なんとも思ってない男から、もしこういうものをもらったら、一発殴って突き返すだろう。




でも、ルフィがくれたものなら話はまったく別だった。


これを作っている間、ルフィはきっと、私のことだけを考えていてくれた。


私のために、私だけのために、作ってくれた。



何よりもルフィのその気持ちが嬉しくて、
どうしようもないくらい胸が熱くなった。






いっぱいになったグラスから、水がぽろっと溢れ出るように、

ルフィへの想いでいっぱいになった私の心からも、自然に言葉が溢れ出た。



「ありがとう・・・・・ルフィ」






ねぇ、気づいてる?


“ありがとう”って言葉に込めた、私の気持ち全部。




私と、出会ってくれたこと。

追いかけてきてくれたこと。

信じてくれたこと。

救ってくれたこと。

必要としてくれたこと。

守ってくれたこと。



・・・愛してくれたこと。





全部全部、ありがとう―――――――――







「しししっ、気に入ったかー!?よかったあー!!」




ほらね、わかってない。


でも、いいの。

好きなの。



もう、どうしようもないくらいに。








朝になったら、サンジ君を筆頭にみんなが誕生日を祝ってくれるだろう。


でも、今だけは――――――――




「ね・・・ルフィ」


「なんだ?」




「今日・・・ロビンは見張りで帰ってこないから、その・・・・・」


「ん?」



「も、もうちょっとこのままここにいて?///」




なんだか恥ずかしくて、それだけ言うのがやっとだった私。

きっと真っ赤になっているだろう顔を見られたくなくて、うつむいた。




ルフィはそんな私を見て微笑むと、優しく抱きしめてくれた。



「ナミがいてほしいんなら、おれはずーっとそばにいるぞ!」


「・・・ほんと?」



「ああ!嫌だっつっても離れねェからな!!!」






嫌なわけ、ないじゃない。



ていうか、もう私が無理なの。


私が、ルフィから離れられないの。





「・・・責任、とってよねっ///」



この私を、ここまで夢中にさせるなんて。


きっと、世界中でただ1人、あんたにしかできないこと―――――




「ん?なんか言ったか?」




「・・・・・なんでもない///」



もう少しだけ。


2人っきりでいたい。





来年も再来年も、いつまでも。


年を重ねたとき、隣にいるのが彼でありますように。





そして私は、もう1度心を込めて言った。


「ありがとう、ルフィ!!」――――――――








シアワセの香り










なにもしてくれなくてもいい。

ただ、そばにいてくれるだけでいい。


それは、まぎれもない本音なんだけど。

でもね、それって少しウソだったかもしれない。


だって、やっぱり嬉しかった。

ルフィが私のために、一生懸命なにかをしてくれることが。


それがどんなに不恰好なプレゼントだって、私は心から幸せ。

何度言っても足りないくらい、

ルフィ。


ありがとう―――――――――













※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなs・・・・・・



盛大にいまさらって感じだと思うんですが
ナミ誕SSです!!(ど―――ん!!!

いやもうホントやる気あんのかってツッコミがきそうなんですが
まじすいませんでした・・・・・


出来栄えのほうは正直な感想を
拍手レスに書き込んでいただけたらうれsh・・・(ry



ゴホゴホ、すいませんまじで(正座)

しかも書くたびに長くなってって
もはやSSじゃなくなってく気がするのは
どうなんでしょう・・・ww


追記:ナミさんがうさぎ好きという設定は
私の勝手なイメージですww
勝手に設定に使ってしまって許可いただいてないんですが・・・・
ナミさんもし嫌ってかふざけんなって感じでしたら編集しますんで
ご連絡ください(汗←

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