Novel2

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《NAMI Side》


航海の途中、私たちはとある島に停泊していた。


それなりに栄えている大きな町で、ルフィを引き連れて買い物をしていると、
なんだか見覚えのある後姿が目に入った。



『ね、ルフィ!あれ・・・もしかしてエースじゃない?』

『え、どれだ?』

『えーと・・・あ、いま花屋に入ったあの黒髪の・・・』

『ん〜?よく見えねェぞ??』



いま横顔がチラッと見えたけど、あれは間違いなくエースだ。


エースだけど・・・

なんだか様子が違う。


前会ったときとは違って、普通の民間人のような服装をしているし、
心なしか表情もやわらかいような気がする。



これは・・・もしかして・・・・・




『あっ!いま見えた!!エースー!エーふごっ!!!!』

急に大声を出したルフィを、殴って黙らせた。


『いってぇ〜!なにすんだナミ!!』


『ちょっと黙って!』



エースが花屋の店員さんから受け取っていたのは、赤いチューリップ。

それを見て私は、自分の直感が正しかったことを悟った。



『・・・おもしろそうね』


思わずニヤッ、とにやけてしまう。



『ルフィ、エースのあと尾けるわよっ!』

『尾ける?』

『そうよ!ほら、見つからないようにこっそりついてくのよ!!』


『声かけたらだめなのか?』

『だめよ!エースが花持って、誰に会いに行くのか気になるじゃない!!ここからはもうしゃべっちゃだめよ!』


『んん、なんかよくわかんねェけどわかった!』



元泥棒の私にとって、相手に気づかれないように尾行するのなんて簡単だ。

それにエースは海賊のくせに気を抜いているのか、
周囲に注意を払うということをほとんどしていない。

ストライカーに乗ったエースをウェイバーで追いかけ、
たどり着いたのは川の下流にある小さな家だった。



その家のかわいらしい住人を見て、
私はやっぱり自分の直感が正しかったんだと理解した。

さすが私ね!!












《ACE Side》


「とまぁ、そういうわけよ」

「わけだ」



「・・・・・・・・」



おれはかつてないほど絶望していた。

自分の愚かさに。


弟とその仲間に尾行されてるのに気づかねェなんて、
普段のおれなら絶対に考えられない。

完全に、気がゆるみきってたってことだ。

白ひげ海賊団二番隊隊長の名が聞いて呆れる。


情けない。
心底情けない。




「あ、あの・・・とりあえずお茶を・・・」


ずーん、と効果音をしょっていそうなほどに落ち込んでいるおれと、
やたら楽しそうなルフィとナミの間でどうリアクションをとっていいのかわからなかったのか、
モーダがひどくおろおろしながらお茶を運んできた。



「・・・悪いな、モーダ」

「えっ、別にいいよ?」

彼女は少し困ったように微笑むと、ルフィとナミのほうに向き直って、
頭を下げた。


「はじめまして。私、モーダっていいます。よろしくお願いします!」


「おう!よろしくなー!」

「まさか、エースにこんなかわいいお友達がいたなんてね〜」



ナミのやつは、おおよそ感づいているのだろう。

さっきからニヤニヤしておれを見ている。

これだから、女ってやつは厄介なんだ・・・



「・・・モーダ、とりあえず座れ」

おれはモーダを促すと、深々とため息をついた。


「なんだよエース、元気ねェなー!!」


お前のせいだろ!!と言いたいのをぐっとこらえる。




「2人とも、今日はどこかへ出かける予定だったの?」


「あ、えっと・・・上流にある街に、新しく出来た公園に行く約束をしてて・・・」

おれの顔色をうかがいながら、モーダは律儀に説明する。


・・・気使わせちまってるな。




いや、というか待て。

そんな話をしたら、こいつらおそらく・・・!


「公園!?楽しそうだな!!」

「へぇ〜。私も興味あるわね」


目を輝かせているルフィと、またニヤニヤしながらおれを見るナミ。




やっぱりな!!!!

そうなるよな!!!!!!


なんとなくこういう事態になるとわかってはいた。

わかってはいたが・・・


「あ、そしたらせっかくですし、ご一緒しませんか?」

「!?」


思わず隣に座ったモーダを見る。

するとモーダは、
「エースもせっかく弟さんに会えたんだし、一緒のほうがいいよね?」
とニコニコしながら言った。


いや、別に・・・

というか、おれはお前と2人で・・・




「いいのか〜!?じゃあ早く行こうぜ!!」

「ルフィ、ひとまずお茶飲んでからにしましょうよ」



ああもう無駄だな。何を言っても無駄だ。



「・・・モーダ、準備してこい」


「あ、うん。ちょっと待ってて」


ぱたぱたと自室に駆けていくモーダを見送って、おれはまたため息をついた。


疲れる。
非常に疲れる。


まだ何もしていないのに、なんなんだこの疲労感は。



「お前ら・・・頼むから余計なことだけはすんなよ・・・」


「あら、わかってるわよ」

「めいいっぱい遊ぶぞー!」



底の知れない笑みを浮かべているナミと、
なにもわかっていないであろう弟。




おれはもはや、今日という日を平穏に過ごせることを祈るばかりだった・・・・・

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