小説メモ&拍手お礼絵。

□絶対服従。
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ガイは慌てて片手で彼女を制した。





「ちょちょ…っ、ちょっとストップナタリア!!」
「――ぇ…?」



いつもの彼を思えば当然なガイの反応に、ナタリアは動きを止める。
その瞳が、驚きと疑問を映して瞬いた。



「ガイ、さま……?」
「き、君だって知ってるだろ!?
そ…それ以上近付かないでくれ、頼むから……!」




連ねられる様付けされた自分の名前に、焦りと困惑と危険を感じながらもガイは首を振ってベッドの上を後退る。
一方のナタリアはというと、訳の分からない状況に投げ出されたガイよりも大きな困惑を感じているようだった。 その美しい瞳が、不安げに揺れる。





「……ガイ、さま…。
何故…、何故そんなことを仰るんですの……?」
「な、何故も何も……、俺は女性が怖いんだよ。
君も知ってるだろう…?」
「………どうして、そんな嘘を…」





先程までの柔らかな表情が嘘のように崩れていく。
今にもナタリアは、幼子のように泣きだしてしまいそうである。
しかし理解の難しい状況に追い込まれ、その上目の前で女性に訳も分からず泣かれそうになり、実際この事態に泣きたいのはむしろガイの方だった。
それでも何とか彼は虚勢を張る。




「……嘘じゃない。
情けないけど、毎日君から逃げてるじゃないか」
「嘘ですわっ!」




突然上げられた声に、ガイの言葉が止まる。
するとナタリアはその瞳に大きな雫を携えた。





「……だって、ガイ様はいつも私に触れて下さいましたもの…。
手を握って下さったり、抱き締めて下さったり、キスをして下さったり………昨日だって、ベッドの中であんなに優しく…――」
「ばっ……!!!!
ちょっ、ナタリア、何言ってるんだ!!」





覚えのない記憶を並べられ、ガイは慌てて言葉の続きを留めるが、ついその情景を想像して赤くなってしまった。 覚えのないというより、それは今のガイからしてみればありえない事柄である。
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