小説メモ&拍手お礼絵。

□こっそりガイメリ部屋。
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『儚い決意。』






私はもう、ガイラルディア様とは関わらない。

ただのメイドとしてだけ、接する。






――そう、決めたんです。






……だって。

ガイラルディア様は私のご主人様で。
私はガイラルディア様に仕えているだけに過ぎなくて。





私とあの方の関係は、ただそれだけ。

それ以外は何にもありません。




……あっちゃいけないんです。









だから私は決めたんです。



ガイラルディア様と、必要以上にもう関わらない、って…。










――なのに、貴方様はいつも、私のそんな決意を簡単に壊してしまうんです…。















「――…どうしたんだい、メリル」










可愛い小鳥さんが居ました。
お屋敷のお庭で拾った小鳥です。


翼に怪我を負っていて、痛そうにその身体を震わせていて。







「……あぁ、その小鳥…」





可愛そうだったから、介抱して、元気になるまでお世話をしようと思いました。



急いで怪我の手当てをしてあげたら、見る見る内に小鳥さんは元気になってくれました。


お世話をしてあげたからなのか、私にとても懐いてくれて、凄く可愛くて。







私も、小鳥さんがとっても大好きになりました。





……とっても、大好きでした。














「……残念、だったね」







小鳥さんは突然、居なくなってしまいました。




治った翼でどこかに飛び去った訳でも、私を困らせようと隠れている訳でもなくて。



――私の前から、居なくなってしまいました。















「きっと、傷口から良くない菌が入ったんだよ」










旦那様方や先輩方に許可を戴いて、小鳥のお墓はお屋敷のお庭にたてることにしました。


小鳥さんはここでひろった子だから、ここに還してあげようと思ったんです。







お庭の土を掘っていたら、手の甲に冷たい何かが落ちてきました。















「……泣いてるのかい、メリル」









後ろに立ったその人は、背中を向けているはずの私の表情をすぐに見抜いてしまいました。






小鳥さんが居なくなってしまったことが、苦しくて、悲しくて。


私の涙は、止まりませんでした。














「……メリル…」














こういうとき、私の前に現れてくれるのは決まってガイラルディア様でした。





だからこそ、私は決めたんです。



私はもう、ガイラルディア様とは関わらない……、

ただのメイドとしてだけ、接する――。











その決意だけを胸に、頑なに振り返ろうとしない私に対して、その方は言いました。












「――おいで、メリル…」













私は決めました。



ガイラルディア様と、もう必要以上に関わらないって…。








なのに、そんな脆い決意を貴方様は、優しくあたたかく壊して下さいます。




貴方様の、その広げられた両腕に、優しい声に、髪を撫でてくれる手の平に、涙を掬う指に、頬に触れるあたたかな唇に、甘えてしまいたくなるのです。


求めてしまいそうになるのです。







――好きという気持ちを、止められなくなりそうになってしまいます。















「……一緒に、お墓たてようか、メリル。」



「――、……っはい…」






「俺は、君の傍にずっと居るから……」

















――もう、ガイラルディア様と、必要以上に関わらない。





その決意は、雪のように、儚く。

砂糖のように、甘く。

花びらのように、あっけなく。




綺麗に溶けて、なくなってしまいました…。




――End.――

2008.3..29up.

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