小説メモ&拍手お礼絵。

□『姫君の光、やわらかに。』
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光は触れることのできるものだ。

光に触れず生きる人間などいはしないだろう。


視覚というのは、物に反射した光を瞳が捕えることを意味するらしい。
光が無ければ何も見えはしないのだ。つまりは、目で物を見ることができるならばそれは目が光に触れていることになる。
逆も言える。
物は光を反射しない限り、人間の目には映らない。つまりは、もし目の不自由な人が居たとしても、その人の姿を他の誰かが見ることができるのであればその人は全身で光に触れていることになる。

光に触れられない人間などいない。
生きとし生けるもの全てに、平等に分け隔てなく、光は触れ、降り注ぐ。




…だから俺は、君を『光』と例えたんだ。


男女も。老若も。身分の差の壁すらも突き崩し、全てに等しく接していく。
国の王女だから?その輝きはその、頂点に立つ者の立場から溢れ来るものなのだろうか?

…いや、違う。そうじゃない。
君が例えその地位についてなくても、彼女は内から輝くものを持っている。
つまりは、身分など関係なく、彼女は人として輝いている。

その証拠に、彼女は一時の間、己が一国の姫であることを伏せた。
その間その慈しみに変わりはなく、つまりは彼女のその光は上に立つ者の優位からくる優越感や余裕、また下の者を軽んじた気持ちによるものではないということ。




俺もそのあたたかな光に触れ、いつしかその光に憧れを覚えた。

だけど、俺は知ってる。
光は触れることはできるが、掴むことはできないということ。

やってみれば分かる。
手のひらに注ぐ光を捕まえよと、手を握る。すると実際に掴むのは影という名の闇であり、対して光は指を屈めた瞬間するりと手の外へと逃げてしまうだろう。
浴びる光は、捕えることなどできはしない。



彼女も同様だろう。
俺はそのあたたかい優しさに、いつでも触れている。 しかしながら、その慈しみを自分のものにすることなど、できないのだ。
彼女は光と同じ、他人に対して全て平等。そんな彼女を、己の勝手で手にすることなど、あってはならないのだ。



…例外がある。
光を捕まえることなどできないが……、光源が手中に収まることで、捕えることができる。

例えば。
中から輝くガラス玉が一つあったとしよう。離れたところにあれば先ほど同様、捕えることはできない。
…しかし、そのガラス玉自体が、自分の手の中にあったなら…?
そのまま手を握れば光は逃げることなく手中に収まるだろう。
 

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