小説メモ&拍手お礼絵。
□僕の存在意義。
1ページ/1ページ
『夜のおまじない。』
フェイトは、目の前の少女に突然言われた台詞に、咄嗟に理解できず言葉を失っていた。
「………もう、護ってくれなくて良い…だって?」
漸く、フェイトはそれだけを声に出した。
彼の口から零れたのは、確かめの言葉では無く信じられないという想い。
目の前のソフィアは、心なしか少し気まずそうな表情を浮かべながら……頷いた。
「………もう、耐えられないの。
フェイトが私を庇って傷付くところ、私もう見たくなんか無い……っ」
彼女の言う事も分かる。
実際、ソフィアが少ないMPで無理に自分を回復してくれた時には、内心フェイトは罪悪感でいっぱいだった。
自分が、怪我なんかしなければ……と。
「………でも、それは僕がソフィアを護りたいから護ってるんだ。それに、傷もあとからお前に癒してもらってる。
だから、別にお前が気にする事じゃ……」
「でもっ!
でもやっぱり、フェイトが傷付くところは見たくないの!
いくら傷跡が残らないって言っても、フェイトが私のせいで痛がってるの見るの…苦しいよ…」
フェイトの言い分を遮ったソフィアは、そのまま彼の胸に額を当てた。
きゅっと、弱々しく服を握られる。
「ねぇ、もう私なんて護らないでよ…。
私なんかを護って、傷付かないでよ…お願いだから……っ」
「………っ!」
ソフィアの言葉にいたたまれなくなって、フェイトは震える小さな身体を、そのまま力一杯に抱きしめた。
――そんな言葉…もう聞いてられない……。
フェイトの腕の中で息苦しさを覚え、ソフィアは苦しそうにもがく。
「んっ…フェイト……、やっ」
「………な事言うなよ」
「えっ…?」
「そんな事…、そんな事言うなよ…っ。
僕は…ソフィアの事を護っていたいのにっ……!!」
フェイトの荒げた声が胸に響き、ソフィアはびくっと身体を強張らせる。
それでも、彼は彼女の小さな肩を離そうとはしない。
「……っ、ふぇい…」
「お前、分かってるのかよ…!?
僕がお前を護る事が、僕にとってどんなに大切な事なのか…」
「え……?」
ソフィアの戸惑いの声を耳に聞き入れて、フェイトは漸く彼女から身体を離した。
けれど代わりに、痛い程に肩を掴まれ、切なそうな瞳を向けられる。
そのまま、フェイトは苦しそうに告げた。
「ソフィアが心配なのはそうだ……けど、それ以上に僕自身がいつも不安で堪らないんだっ!
いつまた、僕の前からお前が消えてしまうかもしれないって…お前の傍に居ないと怖くて怖くてしょうがないんだよ!!!」
「……!」
「だから、護ってるんじゃないか…っ。
ソフィアを護る事だけが、僕にとっての生きる理由…今生きている意味なんだ…」
――そう。
こんな苦しい毎日の中、僕が今生きている訳は、
ただ、それだけ。
僕の命も、戦う力も、壊す能力も全て。
それは君のためにあるのだと僕は思うから。
「……お前のことを護ることができないなら、僕なんかもう生きている意味も価値もない……」
「……っ。そんなこと……っ!」
「それくらい大事なんだよ、僕にとっては」
「……っ」
言い切られて、ソフィアは言葉を詰まらせる。
その命の所持者がそうだときっぱり言い張る以上、それを覆せる言葉が少女には見付けられなかった。