小説メモ&拍手お礼絵。
□13雪
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『13 雪』
―――ただ真っ白に染まる世界。 いつだってこの場所は、どこを見渡してみても細かな氷の結晶が絶え間なく空を舞う。
そんな色の無い世界の中で、ふと蒼い髪が揺れた。
「……綺麗だな…」
舞い落ちる氷の粒を見上げ、フェイトは呟く。 一旦この星から抜け出すまでは、思いもしなかったこと。
見向くことすら、無かった。
自分達が今生きている、この世界に隠された真理を知るまでは…。
「……これも全て…創られた物、なのか…」
認めたくないことを、口にする。 認めたくないから、敢えて呟く。
そうでもしない限り、不安は身体の中に溜まっていくばかりで、心すらもそんな事実を受け入れてしまいそうになって。
雪が…世界がこんなにも美しいのは、全てそう『創られた』からなんだと、納得してしまいそうになる。
“チガウ”と、言えなくなる気がする――
さくり…。
もやもやと渦巻く暗い考えを改めたいが為に、フェイトは人々が付けた足跡を再び覆い隠そうとしている雪の中を歩き始めた。
さく、さく、と雪を踏みしめる音のみが耳に届く。
晴れない気分を吐き出そうとするかのように、歩みを進めたままで彼は溜め息一つ。
――ふと。
「……あれ…?」
何気なく視線を上げた拍子に、ぼんやりと白と溶けた見慣れた色がフェイトの目に留まった。
淡いピンク色と、長い亜麻色が風に流されている。
「………ソフィア?」
目を懲らしたフェイトは確信した。 腰の辺りまで流れる長い髪、目に留まる鮮やかなピンク色の上着。
その両方友を持ち合わせているのは、少なくとも彼女以外この街には居なかった。
目に映る影がソフィアだと分かると、次にフェイトは不信感を覚えた。 あんな所で、一体何をやっているのだろうか…と。
少なくともフェイトの目には、彼女が何かをしているようには見えなかった。 それどころか、彼の瞳に映ったシルエットは風になびくばかりで、それ自体はあまり動くことすら無い。
少し考えた後、フェイトは再び足を進め始めた。
…彼女の元へと。
『何故』という気持ちもあったが、それ以上にフェイトは不安で溜まらなくなった。
雪と共に揺られる姿は、とても儚くて。
そのまま、雪と一緒に自分の手の届かぬ所へ消えていってしまうような気がして…―――