小説メモ&拍手お礼絵。

□見たい姿。
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水道の蛇口を捻り、持っていた容器に水を満たす。
十分まで水が溜まり、蛇口を元に戻すと、ティアは人知れず溜め息を一つ吐いた。




――今朝、ルークが風邪を引いて寝込んでしまった。
熱があり、それも決して低い熱ではなかったので、今日は旅を一時中断し、ルークを養生させることになったのだ。 さすがに病人を戦闘に参加させたり、長い旅路を歩かせたりはできないからだ。 かといって、病人にペースを合わせて旅を進めたところで、そんなに距離を伸ばせないのは目に見えている。
それ故に、他の仲間たちはその分、今日一日をアイテム整理や武器の整備や休息などで各々自由に時間を活用していた。



――ただ一人、ルークに付きっきりで看病していた彼女を除いては。





先程の溜め息は、自分だけが貴重な一日休みを存分に浪費できないことへの不満からではなかった。

ティアには、何となく分かっていた。 彼が今日(こんにち)、体調を崩した訳を。







『――俺、変わるから…』





明らかにその言葉のせいだろうとティアは思った。

その言葉自体が悪い訳じゃない。 その言葉からくる行動のせいでもない。
目標の為に頑張ることも、努力することも、決して責められるべきものではないのだ。



ただ一つだけ……、彼は無理をしすぎた。



見てて欲しいと言われ、実際にそうしてきたから分かる。
彼はあの日以来、躍起になっているように彼女には見て取れた。 必死になるのは良い。 焦る気持ちも分かる。

ただ、無理だけはしてはいけないのだ。

自分の限界以上のことをすると、人間は驚くほど疲弊する。 身を削ると言った方が分かるだろうか。

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