テイルズシリーズ小説置き場。
□『もう、2度と…。』
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『もう、2度と…。』
身体に回された細い腕に、力が込もる。
それに対抗するように、向こうに回した手に力を込めた。
頭を肩に擦り寄せる。
そしたら首筋に顔を埋められた。
それを映し出す影はぴったりと隙間無くくっつき、まるで元から一つのものだったよう。
ただ愛する人を抱き締め、ただ愛する人に抱き締められるのが、こんなにも甘くて幸せなものなのかと。
彼と彼女は心に浮かべる。
――同時に、苦い想いも心に浮かんだ。
彼は、幼き頃に沢山の大切な人たちを護れず失って、
長い間、彼女を含む女性全てに触れられなくて。
彼女は、数年前に1番大切な人を何も出来ぬままただ喪って
同じ間、彼にだけ触れられなくて。
――あぁ…、もう2度とこの手を離すものかと。
2度と、無くしてたまるかと……。
想いは同じ。 願いも同じ。
二人は、まるで計られたように自らの唇を寄せ合う。
それらが柔らかく溶け合った時、
二人は、もう2度目が来ないようにと、
今この時の永遠を願った……。
――End.――
2007.12.31up