テイルズシリーズ小説置き場。

□『果てなき望み。』
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『果てなき望み。』






頬に触れる柔らかな髪が、こそばゆい。


首筋に時折当たる優しい息遣いが、心地いい。


腕に感じられるあたたかなぬくもりが、愛しい。






こそばゆくて、心地よくて、愛しくて。



とても、とても。












――俺は彼女を抱き締めていた。






最初は確かに震えていたけど、でもそれは本当に最初だけのことで。



今は、少しこそばゆいけど、心地よくて、ただただ愛しい。












自分のこの行動に対する反応に興味が湧いて、彼女の顔を覗き込もうと、少し身体を離すと。



へにゃりと身体を脱力させて、その場に座り込みそうになる彼女。





「……ナタリア?」




名前で呼び掛けると、彼女は見事に顔を赤く染め上げて、数回口をぱくぱくとさせてから、漸く言葉を発した。


「だっ……だって、殿方に抱き締められるなんて、ガ…ガイが、初めてなんですもの……!」
「…ナタリ」
「それに、」


一度、言葉を区切って。




「他でもない、あなたなんですもの……。
…っ何だか私、とても恥ずかしくて…その……」





そんなこと言われて、俺の口元は思わず笑みを浮かべちまったらしい。


笑わないで下さいまし!と彼女に窘められて漸くそれに気付いたほど、本当にそれは自然な笑みだった。





こそばゆくて、心地よくて、愛しくて、



――可愛い。











「……構いませんよ、ナタリア様」





そう口にすると、彼女は頬に赤みを残しつつも疑問の表情を浮かべる。


俺は肩に回していた腕を、片方だけ彼女の腰の辺りに回し直して。







「――今なら、例え貴女が倒れられても……、俺が抱き留め、貴女の身体を支えて差し上げられます」



「……っ!」





恭しくそう口にすれば、多少治まりかけていた彼女の頬の赤みは、先程よりも更にその色を強めて。



それに気付かないふりをしながら、俺は再び彼女を抱き寄せ、彼女の身体を自らの腕の中に閉じ込める。









――あぁ、もし俺が彼女の唇をそのまま奪うことが出来たなら、





彼女の頬は、どこまで赤く染まるのだろうかと……。











己の次なる目標を掲げ、俺はまた密かに微笑んだ。




――End.――

2007.12.29up

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