長編
□6,お互いの道
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何で…?
何で別れたはずのお前がここにいる…。
そこに立っているのは紛れもなく三ヶ月前に別れた彼女。
「…久しぶりね」
あぁ、ホントだな。
そのイラつく声を聞いたのは。
「懐かしいなぁ…たった三ヶ月しか経ってないのにもう随分前のようにおもえるわ…」
辺りを見廻しながら彼女は確かにそう呟いた。
お前は最後に会ったあの言葉で俺をどれだけ悩ませたか知らねーからそうやって気軽に話せんだ。
俺は正直口を開くことが怖い。
というより関わりたくない。
「………帰れよ…」
だから、こう云うしかなかった。
オメーあん時言ったじゃねーか…。
俺の顔なんざもう見たくねぇって。
平然と元カレんとこ来るとかマジ迷惑だっつーの。だから…
「帰れよ…」
こいつの顔をみてるだけで俺のイライラが除々に増すだけだ。だったらもう帰ってもらいたい。
今さら元カノとより戻したいとおもわねーし、それに俺にはもう大切な存在ができた。今そこでつっ立ってる奴にも愛してる奴がいるなら好都合じゃねーか。
千歳の方に目をやると、帰ろうとする気配はない。ずっと下を向いて何か話だそうか悩んでいるのだろうか。
だが別にその言葉を聞きたいともおもわねーし、むしろこのままドアを閉めたいと思った。
そしたらこいつの顔を見なくても済むから。
閉めることを決意した俺はドアノブをギュッと握り、自分の方へと引き寄せた。
こいつとはもうこれでさよなら…。
「じゃあな、彼氏とうまくやれよ」なんてお節介なことを告げて閉めようとした。
「待って!話があるの!だからうぅぅ……」
!?
千歳の唸り声を聴いてか、閉めようとしていた俺の腕は瞬時に止まった。
そして再びドアを開けた。
すると、そこには彼女がお腹を押さえて倒れていた。
すぐさまそこに駆け寄り、丸まっている背中を支える。
「まさか…お前…」
この状態を目の当たりにした瞬間わかった。
こいつの腹の中には…
「えぇ……妊娠してるの…」
少量の汗を流した千歳は俺の目をみてそう告げた。
「病院行くぞ」
「え!?いいよそんなっうぅ…」
「いーわけねーだろ、ほら行くぞ!」
腕時計をみると綺麗な満月が見れる時間帯。こんな時間に近くでやってるのは救急病院くらいしかない。
「ちょっとそこまで歩けるか?」
「…ホントに行くの?大丈夫よこれくらい…」
「オメーは大丈夫かもしんねーけど腹ん中の子供は危ねーかもしんねーだろ」
「…」
俺の真剣さが伝わったのか、コクリと頷き病院に行くことに賛成してくれた。