長編

□6,お互いの道
1ページ/6ページ



何で…?

何で別れたはずのお前がここにいる…。


そこに立っているのは紛れもなく三ヶ月前に別れた彼女。


「…久しぶりね」


あぁ、ホントだな。

そのイラつく声を聞いたのは。


「懐かしいなぁ…たった三ヶ月しか経ってないのにもう随分前のようにおもえるわ…」


辺りを見廻しながら彼女は確かにそう呟いた。


お前は最後に会ったあの言葉で俺をどれだけ悩ませたか知らねーからそうやって気軽に話せんだ。

俺は正直口を開くことが怖い。

というより関わりたくない。


「………帰れよ…」


だから、こう云うしかなかった。


オメーあん時言ったじゃねーか…。


俺の顔なんざもう見たくねぇって。


平然と元カレんとこ来るとかマジ迷惑だっつーの。だから…


「帰れよ…」


こいつの顔をみてるだけで俺のイライラが除々に増すだけだ。だったらもう帰ってもらいたい。

今さら元カノとより戻したいとおもわねーし、それに俺にはもう大切な存在ができた。今そこでつっ立ってる奴にも愛してる奴がいるなら好都合じゃねーか。


千歳の方に目をやると、帰ろうとする気配はない。ずっと下を向いて何か話だそうか悩んでいるのだろうか。

だが別にその言葉を聞きたいともおもわねーし、むしろこのままドアを閉めたいと思った。

そしたらこいつの顔を見なくても済むから。


閉めることを決意した俺はドアノブをギュッと握り、自分の方へと引き寄せた。


こいつとはもうこれでさよなら…。


「じゃあな、彼氏とうまくやれよ」なんてお節介なことを告げて閉めようとした。


「待って!話があるの!だからうぅぅ……」


!?

千歳の唸り声を聴いてか、閉めようとしていた俺の腕は瞬時に止まった。

そして再びドアを開けた。

すると、そこには彼女がお腹を押さえて倒れていた。

すぐさまそこに駆け寄り、丸まっている背中を支える。


「まさか…お前…」


この状態を目の当たりにした瞬間わかった。

こいつの腹の中には…


「えぇ……妊娠してるの…」


少量の汗を流した千歳は俺の目をみてそう告げた。


「病院行くぞ」

「え!?いいよそんなっうぅ…」

「いーわけねーだろ、ほら行くぞ!」


腕時計をみると綺麗な満月が見れる時間帯。こんな時間に近くでやってるのは救急病院くらいしかない。


「ちょっとそこまで歩けるか?」

「…ホントに行くの?大丈夫よこれくらい…」

「オメーは大丈夫かもしんねーけど腹ん中の子供は危ねーかもしんねーだろ」

「…」


俺の真剣さが伝わったのか、コクリと頷き病院に行くことに賛成してくれた。




 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ