長編

□5,壊れた時計
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俺の足が誰かに操られているかのように勝手に動く。

どんなに止めようとしても止められない。

こうなったのも全部アイツのせいだ。

三ヶ月の月日の中で志村の存在は弟から何かに変化し始めたのは確か。

うまく言えねーけどアイツの表情一つ一つが愛くるしいと感じるときがある。


つまりそれは………


奇妙なことを考えてる内にふと俺の足がピタリと止まった。

みるとそこは学校。

俺が勤務している『銀魂高校』の門前。

考えてみれば、志村がいる心当たりなんて全く知らなかった。

志村と会うのは学校だけ。

それだけじゃ物足りないと思い始めたのはいつ頃からだろうか。


門を軽々と飛び越え、校舎の中に入った。

夜の学校だから暗くてどこになにがあるのかさっぱりわからない。

だんだん目が慣れてきて幽かに『職員室』と書かれたプレートが見えた。

その右隣にある懐中電灯を手に取り、スイッチを入れる。

ポチッと鳴って光るライトは非常に眩しくみえた。

いつも見回りの時に怯える校内でも今は全然怖いと感じなかった。


「志村をみつけたい。誰よりも早く」と心が煩いほど叫んでいるからなのかもしれない。


まずはじめに思い浮かんだのは『3Zの教室』。

もしかしたら忘れものを取りに来たって可能性もありえる。

3Zの教室に着くと扉を勢いよく開け、懐中電灯で志村を捜した。

だが、人の気配すら感じなかった。


「ちっ」


一体何処にいやがんだアノヤロー!!


次に思い浮かんだのは俺と志村の溜まり場、『国語準備室』。

教室にいない時点でもう諦めていたが、ひょっとしたらいるかもしれない。

と、密かに期待した。

国語準備室の扉前に着いたが、鍵がかかっていた。


つーことはここには来てないってことになる。


やっぱいなかったか…。ここにはいねーのか。



タンタン…



そう諦めかけてたとき、突然階段を上る音が校舎中に響き渡った。




 
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