仁柳生
□柳生誕記念
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10月19日。
今日は柳生の誕生日だ。
夜中にメールが来ていたり、学校であった友人からはおめでとうと声をかけてもらったが、柳生が一番祝って欲しいと思っている人物からはまだなんの反応もない。
仁王君は私の誕生日を忘れているのでしょうか…
朝練のときに仁王にあったが、仁王は誕生日のことには一切ふれず、いつもどうりの会話しかしなかった。
今はもう部活が終わり着替え終わったレギュラー陣はさっそうと帰って行った。
残っているのは柳生と仁王だけで、一緒に帰るため先に着替え終わった仁王が柳生が終わるのを待っているのである。
「やーぎゅ、早くしんしゃい」
「やーぎゅ、ではありません、柳生です。……すいません、お待たせしました」
「ほんじゃあ、行こうかのう」
「そうですね」
仁王と柳生は歩き始めたが、やはり仁王は誕生日のことには触れてないで、今日起きたことについて、楽しそうに話すだけだ。
恋人に自分の誕生日を祝ってほしい。
そう思うのは当たり前のことで勿論柳生もそうだった。
「ほんでな「仁王君」
どんどん家が近付いて来たことに焦った柳生が声を掛けた。
「どうしたんじゃ?柳生」
「…は……よ……て………か」
「何て言ったんじゃ??」
あまりにも小さすぎて聞き取れない柳生の声に仁王が聞き返す。
「今日は私の誕生日なんですよ?!忘れているんですか?!!」
柳生のそんな発言に仁王は、ニヤッと笑い、何故か嬉しそうに柳生に微笑む。
「…なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
逆に柳生は拗ねて、泣き出してしまった。その姿はとても紳士には見えず、年相当の少年に見える。
「俺、今日柳生が誕生日のこと言うてきたら、おめでとうって言ってやろうって決めていたんじゃ」
それを聞いた柳生は自分の誕生日を恋人が忘れていなかったことに安堵し、ボロボロ涙を流した。
「な!!なん、ですか、それは!私は、今日…真剣に悩んで、いたんですよ?!」
仁王は泣いている柳生の眼鏡を外し、目元にキスを落とした。
それに驚いた柳生の涙も止まった。
「泣くんじゃなか、柳生」
「仁王君のせいですよ、騙すなんて」
「詐欺師じゃからね。でもこれで言えるなり」
仁王は柳生を抱きしめて、耳元に口を寄せて囁いた。
「誕生日おめでとう、柳生」
END.
(ところで、なんで私が言い出すまで誕生日を忘れているふりをしようなんて思ったんですか??)
(ん?それは柳生にずっと俺のことを考えて欲しかったからじゃよ)
(……全く、あなたって人は)
(プリ)