跡忍
□忍足誕記念
2ページ/2ページ
「跡部…なぁ跡部ってば」
そんな忍足の呼び掛けにも跡部はだんまりを決め込む。
目も合わせない跡部に忍足は小さな溜息をついたあと、二人きりのときしか呼ばない名前を口にする。
「景ちゃん」
そう呼ばれた跡部は顔をあげ、驚きの表情をしている。
それもそのはず、忍足は学校関係者に跡部と恋人ということを知られるのを嫌がり、学校にいる間はいくら跡部が呼んで欲しいと頼んでも、呼んでくれなかったからだ。
「…侑…士?」
「ほら、いつまで拗ねてんねん。俺かて今日景ちゃんに会えなくて寂しかったんやで?」
「…侑士」
「な?せやから拗ねてないで機嫌直して俺と居てや」
「…」
「ダメなん??」
「はッ!!俺様は拗ねてなんかいねぇよ!俺が侑士と一緒にいることを拒むわけがねぇだろうが」
「そうやな」
跡部の言葉に優しく微笑んだ忍足は、嬉しそうに笑った。
その笑顔を見た跡部は忍足の手を引いて、何処かへと足速に向かって行く。
急に学校にあるすべての液晶テレビの電源がついたと思ったら、そこには跡部と忍足が映っていた。
忍足の肩に跡部の手が回されて、抱き寄せられている。
「よく聞け。ここにいる忍足侑士は俺のものだ。手を出す奴は女でも容赦しないから覚えとけ!!」
跡部がそう言い放った瞬間、校内中に耳がつんざけるような黄色い声が上がった。
急な跡部の発言に忍足は驚きを隠せずに動揺してしまう。
「な!ちょっ!!なに言ってるん??」
「ちょうどいい機会だ。今日侑士に会えなかったのは俺様もきつかったしな。これで侑士に手を出す奴もいないだろう。それに……」
「…それに?//」
そこまで言って言葉を止めた跡部を変に思ったのか、跡部の台詞に顔を赤くしていた忍足は続きを促す。
「…これでいくらでも侑士と一緒にいれるだろ?」
「……そうやな」
その言葉に嬉しそうに微笑みながら忍足は答えた。
このやり取りも校内中に放送されていたのは、言うまでもない。
END.