跡忍

□この思いが風に乗って
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あの男みたいに真っ直ぐ行きたいと思った。
俺様でも、自尊心が高くても、いいから。
真っ直ぐ、真っ直ぐ進みたいと思った。


でもふと気づいた。
あの男も今は好き勝手出来てるが、将来は自分と同じで親の跡を継がなければいけない。
そのために生まれてきたと言っても過言ではない気がしてきた。

自由でいられる時間は少なく、高校を卒業してしまえば、嫌でもその道に進まなければならない。
結婚相手も決められるかもしれない。
それでも、

「あいつを―――跡部を愛してるんや」

大事な時間はあっという間にすぎていく。
あと何ヶ月かしたら中学を卒業だ。
高校は氷帝に行ける。
だが、大学はそうもいかないだろう。
跡部もそうだ。あいつも高校は一緒に行ける―――それでも結構無理矢理感があったが。
それでも選択する科目が違くなるのは目に見えている。
俺は物理や生物、数Uや数Vを取らなければいけなくて。
でもあいつは帝王学や経済学を取らなければないだろう。
今までのように会えるのもあと数ヶ月の間だけ。


この思いが風に乗って愛しい恋人の耳に届けばいいのに。

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