跡忍

□永遠
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永遠なんてもの、この世には存在せーへん。
そんなことはわかっとる。

永遠に一緒だよ。なんて言っとったカップルやって、永遠に友達だからね。って言っとった親友同士やって。

永遠を誓い合った夫婦だって。
しょーもないことで大喧嘩して、あっさり『さようなら』してしまうことなんて、この世の中ざらにある。
永遠なんて言葉に意味はあってないようなものや。
やったら俺は永遠なんていらんねん。



「それがお前の言い分ってわけか?」

「まぁ、そういうわけやな」

「まぁ、俺も永遠なんて信じてはいないがな」

「そうなん?」

「もちろんだ。永遠だなんだといっているやつはその言葉で相手をがんじがらめに縛り付けられたと思っていやがる。」

淡々と、架空の登場人物を蔑むかのように言った。
そして跡部は言葉を続ける。

「だからつねに最良の状態に持って行くのではなく、その状態を甘んじて受け入れてしまい、やがて物足りなくなり崩壊する」

なるほど、と思った。
跡部の言うことは最もだと思った。
人間という種族は己の利益になることしか考えて無いように思える。
まぁ、かくゆう俺もそうやとおもう。
そうじゃないと思うやつもいるかも知れへんが、ボランティアだのなんだの言ってるやつやって、それは自分がやりたいと思ったからやる。要するに利己的に動いているとしか思えへん。
それが人間だと言われれば、納得するしかあらへんと思う。

「跡部も俺と同じ考えなんやなぁ…」

「当たり前だろ?」

「そうやね。やから俺は永遠何て言わん。それよりも出来るだけ、例えそれがあと一日だとしても、跡部と一緒に居たいと思う」

「そうだな、俺もだ。もし、俺達を離そうとするやつがいたとしても、すべての手を使い、出来るだけのことはやるだろうな」

「跡部ならなんだってやりそうや」

「もちろんだ。それでもどうしようもないときは、俺の心を忍足にやるよ」

「ほんま?嬉しい。じゃあ俺の心もあげるわ」

「もらうに決まってんだろうが。愛してるぜ、忍足」

そういって跡部はそっと俺の唇に自分のそれを下ろしてきた。



俺達は今という掛け替えのない時間を生きているからこそ、愛する人を見つけるし、やれるだけのことはやろうと奮闘する。
永遠なんて言葉に頼るより。
永遠なんて言葉に縛られるより。
充実した人生を送ることやろう。
かぎりある命の中で、出来るだけの時間を愛する人――跡部と一緒に過ごして行こう。
それが俺達に出来る『永遠』の表しかただと思うから。

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