光謙

□I want to meet
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先輩達が卒業してどれぐらいたっただろうか。
三ヶ月?いや一年か?
そんなことを部活に行く前の自分の部屋で考えた。


<会いたい>


先輩達が卒業してから、実際はまだ二ヶ月と少ししか経ってへん。
俺が部長になり、もう八ヶ月か九ヶ月が経った。
それでも先輩達が常に顔をだしてくれていたから、始めはそんなに実感はあらへんかった。
でも、卒業してからあの人達が来なくなり、今度は俺が部を引っ張る側なのかと思わせられた。
白石部長みたいじゃなくても、俺なりに部活を支えて行きたいと思っておる。
せやけどたまに、あの人達に会いたいなと思ってしまうんや。
遠山も前よりは少なくなったが、何処か泣きそうな顔をするときがある。
駄々をこねるときがある。
そういう場合は上手く言い聞かせる。
先輩達は卒業し、高校で頑張っとるんやから、我が儘いうんやない、って。
でもそれは、俺が自分に言い聞かせているだけやのかもしれへん。

ラケットバックを持って家を出る。
何十分か歩いたら、学校だ。

それまでこのぐちゃぐちゃな思考をどうにかせんと。
切り替えようと思い、今日の練習メニューを思い出す。
あぁ、今日はレギュラーでの試合がある日か。

こうやってあの人達のことも忘れて行くんやろうか。

切り替えようと思ったのに、俺の脳はそれを許してはくれへん。
ほんま、どうしたらええんやろうか。
こんなに思考がまとまってへんかったら、おちおち部活も出来へんわ。

門が見えてきた。
結局、思考はまとまらないまま。

「光ー!」

幻聴やろか。
いるはずのない人の声が聞こえる。

「光ってば!」

「謙也、無視されとるやん」

「うっさいわ、ユウジ!無視すんなや、光!!」

幻聴やない。
部長、副部長、千歳先輩、師範、ユウジ先輩、小春先輩。
そして謙也さんがいた。
なんでや、とか高校の部活は、なんてことが過ぎったが、俺の身体は素直やった。
走って先輩達に近づいて行く。
さっきまでごちゃごちゃしていた俺の思考は、もう何処かに行ってしまっていた。

END.



更新が遅くなって申し訳ありません><

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