BL小説
□華
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やっぱりやるんじゃなかった……
──華
まず、家から出たのが間違いなんだ…
町をふらふら歩いていたら「パー子じゃないの〜」といかにも作った女声のアゴ美に声を掛けられた。
「テメッこんな町中で、人の源氏名を呼ぶんじゃねぇよ!!!!」
「ちょーどよかったわ〜、今日ママがいなくって、人手に困ってたのよ〜手伝ってくれな〜い?
給料弾むわよ♪」
給料という言葉に少し揺らぐ…確かにそっち関係の仕事は結構金が貰える。
しかしホストならまだしも、この仕事はオカマなのだ……女装なのだ……
そして男相手なのだ……
別にヤルわけではないから、貞操の心配はないが、やっぱりセクハラとかはあるわけで……
でも最近仕事なくて困ってたから…
とか考えてたら、すでに連れ込まれていた……
早速女もんの着物を着せられ、ウィックを付けられる。
「相変わらず可愛いわね〜まぁ、私の次にだけど♪
さ、働いてもらうわよ〜」
「……ヘイヘイ」
この店で働くのも大分慣れてきた(慣れたくはなかったが…)。
なんとなく客を相手にしながらも他の事を考えるようになった。
最初に考えたのは恋人のこと…
高杉元気かな〜とか、こんなとこで働いてんの知ったらどー思うかな〜笑うかな?とか……
そしたら会いたくなっていた。
そんなこと考えてたら、酔っぱらったオヤジに腿の辺りを触られていた。
しかし、ここで殴ったら給料貰えないかも…
じゃぁどうしよ…このままやらせとくわけにはいかないし……
口で!!と思った瞬間、俺の顔の横を銀色の物がかすっていった。
「…オイ、クソジジィ…誰のモンに手ェ出してやがる…」
静かにしかし重く冷たい、よく知りつくした声が降ってきた。
「……高杉…?」
我ながらだらしない顔をしていると思った。
俺の横をかすめっていった銀色の物は高杉の刀だった。
つーか今の状況は幻か?
高杉のヤツ、遊郭には行くが、こんなところくるはずがねぇ…
「お前…なんでこんなとこにいんだよ…」
「んァ?店の前通ったら、手前ぇの顔で宣伝してたからだよ」
「なっ!?アゴ美のヤロー……」
「つーか何やってんだよこんなとこで…」
ガッと横にいたオヤジをどかしてそこに座った。
「仕事だよ、仕事。金に困ってんの」
「そうかぃ。じゃぁもういいだろ、行くぞ」
「えっ!!?どこに!!!?」
グイッと俺の腕を掴み、歩きだす。
「店の者はいるか?コイツ、もう抜けさせてもらうぞ」
「え、あ、はい〜。パー子これ、給料よ」
アゴ美が封筒を俺に渡した。
「お、ありがとよ…って、何普通に帰してんだよ!!止めろよ!!!あれ?おい高杉、コレで帰んのか」
完全に女もんの着物だし、髪もこのまんま、化粧だって落としてねぇのに…
と言ったら
「俺だって、女もんの着物だぞ」
とか言われた…
お前ェとは形が違うだろーが!!!
心の中で、叫んで店を連れ出された………
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