BL小説
□─香り水
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草木も眠る丑三つ時とはよく言ったもので…
今じゃ丑三つ時などと言っても寝ているのは子供と年寄りくらいだろ…
特にここ歌舞伎町では、まだまだこれからという人や店も多い。
まぁ、俺にとっちゃ関係無いことだがな。
でも、アイツは違うらしい……
「晋ちゃぁん。いる?」
玄関から声がした。
こんな時間によくノコノコと来れたものだ…
ちったぁ人の事も考えろ馬鹿が…
第一印象は目が覚めるような綺麗な金髪。
と言っても最近じゃ其処ら中金髪だらけだが…
でも、其処ら辺の輩とは違うなと最初に会ったときに思った。
中身は最悪だったけど…
よくは知らないが(知りたくもないが)、知り合いからホストをやらないかと言われて今はホストをやっているらしい。
そんなホストヤローと俺がどうして、度々会瀬をするような関係になったかは話せば長くなるから止めておく。
兎に角、こうして坂田金時という男は、毎度毎度仕事帰りにうちを訪れては、朝を迎えるのだった。
「なんだよ。こんな時間に…俺ぁもう寝るんだよ」
とりあえず玄関を開けて言い放つ。
「何言ってんのさ今さら…ここはもう俺の家みたいなもんなんだから」
そう言うが早いか、靴を脱ぎ家に入ってきやがった。
「てめぇ何勝手に入ってんだよ!!」
「まぁまぁ、とりあえず腹減ったから何か作って」
金時は居間までくるとソファーにどっかりと座りそう言った。
「何様だよ」
「誰が作るか」と言って金時の前を通りすぎたのが間違いだった。
グイッと俺の腕を掴み自分の膝に乗せたのだ…
「なっっ!!!」
腹のところでガッチリとホールドされたため身動きがとれなくなった。
「離しやがれ!!」
「固いこと言わないの〜」
バタバタと暴れる俺を離そうとせず、むしろ先程よりもギューと抱き締められた。
「だって、久しぶりじゃんこうやって会うの」
「………」
確かに、ここのところお互い忙しくてあまり会っていなかった。
それを聞いた俺は少し大人しくなった。
しかし、金時から香る香水の匂いに気づいた途端俺はバッと腹のところにあった金時の手を振りほどき、反対側のソファーに逃げた…
少し大人しくしていたため、金時も気を抜いていたのか案外簡単に振りほどけた。
「晋ちゃん?どったの?」
「……煩せぇ…」
俯きながら台所の方へ向かった。
香水…
確かに女を相手にした商売だから香水の匂いくらいするのはわかってる…
それに今日に始まったことでもない。
…でも何となく今日は凄く嫌に感じた。
「ねぇ、晋ちゃん?出てきてよ」
金時が台所の暖簾越しに話しかけた。
「……風呂…入ってこい…」
「?なんで…?」
「いいから入ってこい…
じゃないとメシ作らねぇからな…」
ぼそぼそと呟きながら金時に告げた。
「……わかった。
なんか夫婦みたいだな」
ふふふっとなんか気持ち悪い笑い方をする金時に暖簾から腕だけ出して叩いた。
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