BL小説

□日陰とタオルと膝枕…
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9月……

夏の暑さが抜けない季節。
そんな時期に毎年やってくるもの………体育祭…


ぶっちゃけ俺は嫌いだ。

暑いし、疲れるから。


でも、アイツは違うらしい。


「晋ちゃぁん!見てる〜!?」


100m走のスタートラインに立って手を振り叫ぶ。
銀髪天然パーマがぴょこぴょこと揺れる。


俺は木の下の日陰に座って、小さく手を振り返す。

もちろん笑顔はない。


つーか、他の奴等が見てるから叫ぶな…

周りの視線が地味に痛い。

──────

「晋ちゃんやったよ。1位だよ俺!!」


走り終わった銀時が駆け寄ってくる。


「あぁ、よかったな…暑いから、叫ぶな…」


なんでこんなに元気なんだよ…


「大丈夫か?」


隣に座って俺の顔を覗き見る。


「あぁ。多分……」


また違う競技が始まったらしいが、聞こえない。


不意に銀時がいなくなった。


水でも飲みに行ったのか…

もうそんなこと考える気にもなれない…


頭痛い…気持ち悪い…


元々、炎天下で色々できる体ではないのだ。

いつもは保健室からボケーと眺めてるのに、今年は銀時に「競技に出なくてもいいから、俺のこと見てて」と言われたからこうしているが……


「………やっぱ保健室行きゃぁよかったな……」


はぁとため息混じりで呟く…



「晋ちゃん」


遠のきそうな意識の中で銀時の声がして

目を開けようとしたら冷たい物が顔に当たった。


「気持ちぃ?タオル濡らしてきたんだけど…辛そうだったからさ」


あぁ、俺のために…


「ありがとな…」


タオルを受け取り顔に乗せる。


冷たくて気持ちいい……


「ごめんね…」


「何が…?」


顔にタオルが乗ってるから、声だけしか聞こえない。

「俺が見ててなんて言ったから…晋ちゃん辛いのに…だから…」


「いいんだよ。俺が見てぇと思って見てたんだから…」


タオルの端から頷くのが見えた。


「俺さ、こうゆうのしか取り柄ないから。だから1位取って晋ちゃんに見て欲しかったんだ」


「あぁ」


「晋ちゃん、膝枕してあげる」


「……はぁ?」


思わずタオルを取って銀時の顔を見る。


「今日のお詫びに」

にへらと笑うと腕を掴み半ば強制的に膝枕をする。


「柔らかくない…」

ボソリと文句をつけてみた。


「男だもん。今度晋ちゃんがやってね」


「はぁ……わぁったよ」


柔らかくはなかったが、なんとなく気持ちよくて、睡魔が襲う。


「お前、競技出なくていいのか?」


「うん。土方に全部代わってもらった。晋ちゃんのそばにいたかったから」


「……………」


「駄目だよ同情なんてしちゃ。これは俺たちのためなんだから!」


そう言うと、俺の頭を優しく撫でた。



「…銀時……今日のお前…かっこよかったぞ……」


そう言って意識を手放した。



だから、その後の銀時は知らないけど、なんとなく分かる………




→あとがき
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