BL小説

□隣のもやしっ子
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松葉杖をつきながら歩く俺の少し後ろから、カラカラと点滴のぶら下がってるヤツを転がしながら、高杉が歩く。

点滴といえば、高杉の腕は長年の点滴のせいでボロボロになって、真っ白い肌のそこだけ色が変色していた……
それが痛々しくて、あまり直視できなかった。
まぁ普段は長袖を着ているから見えないけど…


屋上まではエレベーターに乗って行けるから、松葉杖の俺でも全然問題なかった。
この病院の屋上は小さな庭みたいな造りになっていて、花壇や芝生があって、街が一望できた。


どうもこの時間は人があまりこないようで、俺と高杉だけで屋上を独占していた。

ベンチに腰掛けると、気持ちのいい風が頬を掠めた。


「やっぱ外はいいね〜消毒臭さも洗われるよ」

「随分眩しいな…今日の太陽は」

高杉は日の光を避けるように、手を額に当てた。


「ふぅ…なんか眠くなるな」

「………」

「…どうした?また天国と交信中か?」

遠くの方を眺めて黙り込む高杉を心配して、下から覗き込んだ。


「……いや…
なんかこんな街を見てると、俺は世界を知ることができないまま死んでくのかと思って」

「……なに言ってんだよ、死ぬなんて考えるなよ!まだまだ人生長いんだし、それに俺だって世界のことなんも知らないで今まで生きてきたんだぞ!!
…だから…死ぬなんて言うなよ…」


だんだん自分でもなにを言ってるのかわからなくなってきて、でも無性に悲しくて、なんか涙出そうになってでも必死に高杉に訴え掛けた。

そんな俺を見てブッと吹き出した。


「お前ホント面白れェな」

「なんでだよ…人がこんなに必死になってんのに」

「悪ぃ。お前みたいに言ってくれる人今までいなかったから」

「え?……そういえば晋助の家族は?全然見舞いにこないけど…」

家族だけじゃない…今まで俺達の病室に高杉を見舞いにきたという奴は見たことがない…


「こねーよ。来る必要がないかな」

「なんで!?…そりゃうちの親だって共働きだからあんまこれないけど、でもいつも電話とかしてくれるよ。必要ないって…」


「…必要ねェからこないそれだけだ。
もう死ぬのが決まってるヤツの見舞いに来たって時間の無駄なだけだろ」

そう言う高杉の顔には一切表情はなかった…

「……死ぬのが決まってるから来ないだなんて、時間の無駄だなんておかしいよ!!



わけがわからない。自分達の子供じゃないのかよ…


「別にかまいやしねぇよ。親がこなくても、生活には困らねぇしな」


そりゃ確かに病院だから、生活的には困らないが…
せれでもやっぱり…

「辛いよ。俺は」

「…お前がそう思ってくれるだけで十分だ」

そう言って俯いてる俺の頭をポンポンと叩いてから、部屋に戻ろうと高杉が言った。





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