物語の続きを
□第 章
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ねえねえ、知っている？ あの噂を知っている？
王制の滅びた小さな国に、血を吸う化け物がいるんだってこと。そう……吸血鬼という名の化け物が。
血を吸って奴隷にした人間と、その国で一番大きな洋館に、二人っきりで棲みついてるらしい。ああ恐ろしい話だね。
けれどその化け物は、夜には出歩けないんだよ。昼の太陽を浴びてしまえば、たちまち浄化されてしまうから。
君もくれぐれも気をつけて。この吸血鬼は普通じゃないから。
この化け物には聖水は効かない。
むしろそれを混ぜた犠牲者の血の葡萄酒や紅い茶を、嫌味たらしく美味そうに飲むそうだ。
この化け物にある翼は、コウモリのように真っ黒ではない。
透き通るような銀色の羽で、犠牲者を包むらしい。
この化け物は、白木の杭でも銀の銃弾でも死なない。
銀の杭でその心臓を貫くことでしか、奴は殺せないんだとか。
この化け物は、おぞましい口の裂けて真っ赤な舌を覗かせた男の姿ではない。
実は血を吸ってから乗っ取った、美しい女性の姿をしているんだって。
だから、くれぐれも気をつけて。
吸血鬼ってのは、健康で若い人間の血を何よりご馳走としてるんだ。
うかつに屋敷に近づいたら、とって食われてしまうかもしれないからね……
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