ニャンコの作文

□ある夜のコト
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「そう言えば素直にヤらせんのかよ。てめぇは」
「だめーVv」

結局これだ。
まあ、その言葉に素直に従っている自分も自分なのだが。

これすなわち、いわゆるお預け状態。
それがもう2週間近くも続いている。

魔術師が、黒鋼の故郷『日本国』に迎えられてまだそんなに経っていない。
慣れないこの世界を選んだ魔術師を気遣って、黒鋼はここ暫く魔術師のお許しがなければ自分からそういった事は一切しなかった。

魔術師の、遠く…辛い過去を知っていたからではない。
ただ単に、大切だったから。

決して聖人君子なんて柄の男ではないが、募る欲望を抑えて、柔らかい子供じみた触れ合いばかり与えて、誘うような甘い色香にも耐えて。

そんな自分を魔術師は楽しい玩具でも見つけたように、からかって遊んでいるけれどそれは別にどうでもよかった。

本当に笑えてるのなら。
幸せだと、感じてくれるのなら。

「く〜ろぽんVv」
「なんだよ」

難しい顔をしてばかりの黒鋼がおもしろくて、思わず魔術師は黒鋼の唇にキスをした。

ちゅ

可愛らしい子供のような。
本人としては、たわいもないいつもの悪戯。
だからいつものように黒鋼が怒って終わり。
そう高を括っていた。

けれど今回は…少し違った様子。
キスされた黒鋼はと言うと、完璧に固まっている。

「えへへー★☆」

にーっこりと微笑む魔術師に何かを言い返す余裕もない。
現在夜中過ぎ。二人きり。
この状態もかなり良くない。


「―――泣かす」
「へ?」



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