ニャンコの作文
□Smoking
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煙草が無いと落ち着かなくて。
イライラして。
でも、彼と出会ってからは…禁煙なんて本当に簡単だったのだ。
口寂しくなればキスを強張り、それは情欲を煽る。
でも結局その後また口寂しくなって…。
その繰り返し。
結果的に煙草は止められたけど、思えば煙草を吸う事より健康には悪かったのかもしれない。
下手すると三日はベッドの中で一日中セックスしてたこともあったし。
"タダレテル"って言うんだろうな…そういうの。
ま、それに付き合う彼も彼なんだけど…
「おい」
ぼんやりしていたファイの耳に、不意にちょうど思い描いていた彼の声が響いた。
「あー見つかっちゃったー」
バツが悪そうに笑うファイに、黒鋼のいつも寄っている眉間の皺が深くなる。
「てめぇ、何サボってやがる」
「黒ろん先生こそー。授業どうしましたー?」
真っ黒なジャージが太陽の光に反射して少し眩しい。
その事と、不機嫌そうな黒鋼の顔が面白くて目を細めるファイを睨み付けながら黒鋼はずんずんと近付いてくる。
「煙草はもう吸わないんじゃなかったのか」
「えへへ〜、指導してくれますー?」
白く細い指先が、まだ小さな炎を宿すそれを手放すと灰がふわりと舞った。
舌を少しだけ絡ませゆっくりとその唇を離していく。
触れ合う程に近付いて痛いくらいに見つめてくる紅色に、合わさる蒼色には艶やかな笑みが浮かんだ。
「煙草味のキス…随分と久しぶりだよねぇ」
くすくす…甘さを含んだ声がまとわり付くように黒鋼の耳に忍び込む。
「阿呆。俺は吸うなって言ってんだ」
険しい深紅の瞳に微かに心配そうな光が宿る。