ニャンコの作文
□ゲームの始まり
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再び考え込んだファイに、にやりと笑い黒鋼がお茶請けとして出されていた菓子に手を伸ばした。
ばくり、と一口食べて一瞬見えた指を舐める仕草。
…なんだか、似合わない気がした。
その唇についた粉砂糖も。
(…甘そ…)
武骨な指先が唇を拭う。
そんな動作が何処か悩ましげに見えて…ファイはにんまりとその口の端を上げた。
「…く〜ろりん♪」
「…あぁ?」
かしゃん…
『ゴバン』と呼ばれる台に手を付き顔を息が掛る程に近付けて唇の粉砂糖と舐め取る。
舌をゆっくりと彼の唇に這わせれば、やっぱり少しだけ甘い味がした。
(…黒たんのことだから…苦いかと思ったんだけどね――)
いつも難しい顔してるのに"甘い"なんて…少し可愛いかも。
そんな考えが一瞬だけ頭の中を霞める。
「…何しやがる」
「えへー」
すっかり不機嫌な顔に戻ってしまった黒鋼を至近距離で見上げながらファイはへにゃ、と表情を崩した。
「だって負けたくなかったし――」
ファイが手を付いた事により散らばった『ゴイシ』を見て、黒鋼は眉間の皺が深くなる。
「ぐちゃぐちゃになっちゃったからー…この勝負は無効だねぇ」
残念だな〜と言いながらゆっくり離れると、黒鋼の視線がファイを貫いた。
「てめぇのせいだろ」
「…かなぁ?」