犬タロの作文

□身長差
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そう思うと、こうして二人同じ空間に居る事自体が恥ずかしく思えて来て。
戸惑いが溢れてしまう。

「も、いいよ…悪かったな」

微かに頬を染めた状態のシンジをじいっと見上げながら、カヲルはそのまま立ち上がった。

「…シンジ君って、可愛いよね」
「なっっっ!!!」

掠めるようにシンジの額にひとつキスを落としてさっと踵を返した後ろ姿に、思わず顔を上げる。

ずるい。
むかつく。
気に入らない。


認めたくないけど、好き過ぎて…ズルい。


急に遠退いた赤い瞳を追うように服の袖を掴む。
それは無意識に、もう殆ど思考の外での行動だった。
カヲルの足が止まり振り返ってまた笑う。

「どうしたの? シンジ君」
「…え、と、だな…」
「何?」

指先が白くなる程に力を入れて服の袖を握り締めている手が痛々しい。
その手にそっと自分の手を触れさせ、シンジが少し怯んだその一瞬に口付けた。

ああもう、とカヲルは思う。
なんでこのリリンはこうなんだろう。
いつもいつも、強がるくせに本当は誰よりも弱い…。


「…ん、ッんぅ…ちょ…なぎ」

待て、ちょっと止めろ、そう抗議したくても二の句が紡げない。
段々と深くなっていくキスに、抵抗出来なくなっていく。
いつの間にこんなに上手くなったんだろう。
キス、なんて自分以外とはしたこと無いはずなのに。

(これが天然なら…、もしかして、将来かなりの女ったらしに…?)

そんな事を考えて、さっと脳裏が冷えていくのを感じた。


「…シンジ君?」

自分よりちょっと低い、けれど柔らかな声が耳に響く。
途端に体中が緊張するのがわかった。

「ッ、な、なんだよ…」

瞳を快感に潤ませたシンジの目つきにカヲルはぐっと息を呑む。
それと同じくして、シンジは緊張した面持ちでカヲルの言葉を待った。

「僕と…、じゃなくて…えと」
「…何」
「僕がこういうコトするの、イヤ…かな?」


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