犬タロの作文

□vanilla ice or kiss?
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「どうしたの? 溶けてしまうよ?」
「…あ、あの…カヲル君…」

当然の事のようにアイスの乗ったスプーンを差し出しながら首を傾げるカヲルにシンジは赤く染まったその顔を隠すように俯いた。

「そのアイスクリーム…ボクが自分で食べちゃ…いけないの?」
「…………」

な、何でノーコメント!!?

「…カヲル君?」
「シンジ君は…………嫌?」
「…嫌なんかじゃ…!!」

突如悲しげに伏せられた瞳に一気に罪悪感が押し寄せたシンジは叫んだ。
断じて嫌な訳ではないのだ。
…ただ…

(…恥ずかしいだけで)

「どうしても…したい、の?」
「うん」

素直に頷いたカヲルにシンジはぎこちない笑顔を浮かべながらも思わずその口元が引きつってしまう。

「な、なんで?」
「シンジは何故嫌なの?」
「何故って…」

(恥ずかしいからだよ!!)

思い切り叫びたい衝動に駆られたがそれを我慢してシンジはぼそぼそと呟きながらカヲルから目線を外した。

「みんな…見てるし…」
「君が思う程、周囲の人間は気にしていないよ」

カヲル君が思うよりはみんな気にしてると思うよ。

それ以前に君は普通にしててもいつも周りの視線集めてるのに。
ちらりと視線を戻してみればそこにはにこにこと相変わらずの笑顔を浮かべたカヲル(当然アイスクリームの乗ったスプーンも健在)。

「…………」
「ね シンジ君(にっこり)」

相変わらず視線は痛い。
というかむしろ奇異の視線は増えている気がする。

(あうう、恥ずかしい…恥ずかしい…ケド)

もう周りの様子を確かめる勇気も起きず、シンジは覚悟を決めてカヲルに向き直った。

「…わか、った」
「いいのかい?」

嬉しそうなその声にコクンと頷いて口を開ける。
もう半分以上ヤケだ。
からかわれようが怒鳴られようが(主にアスカに)仕方ない。

「はい、あーん」
「あーん」


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