犬タロの作文

□スキなトコ、キライなトコ
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子守歌なんて…聞いた記憶は残ってなかったはずだった
記憶の中にあったのは、外側だけを優しさで繕った大人達の姿だけ

いつもいつも
悲しくて、寂しくて、堪らなかったあの頃。

だけど君と会って…好きって言われて、

そんな優しい記憶が少しずつ蘇って来たんだ。

「…誰かに聞かせるの初めてなんだよ?」

君に出会ってから初めてが増えた。
辛い事と一緒に閉じ込め続けていた知らない自分がたくさん見つかったんだ。

そして、『特別』も見つかった。

「…いい加減気付けよな…」

すっかり熟睡しているカヲルの頬を軽くつねって、くすくすと笑う。

早く気付けよ。
君は『特別』だってコト。

ヒントはたくさんあげてるよ?
後は君が気付くだけ。


「早く気付いて、ボクの逃げ道全部塞いで。いつもみたいに笑ってみなよ。…そしたら、言ってあげてもいいよ」


そしたら言える…かも知れない
言葉に出来ないボクの『スキ』。




綺麗な、その髪も
綺麗な、その瞳も
綺麗な、その姿も

ちょっと綺麗過ぎて、正直そんなに好きじゃない。


だけど 唯一好きなもの。
ボクがあいつをスキなトコ。


それは、
ボクのコト『スキ』って言ってくれるその唇―――




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