犬タロの作文

□ひざまくら
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結構重いが、これを全てシンジ君が持つなんてまず有り得ないことだ。

「…えと、大丈夫?」

心配そうな表情を浮かべる彼も小さな紙袋を手にしているけるど中身は彼の大好きな甘いお菓子。
確かチョコレートと焼き菓子だったと思う。

今の僕の状況はいわゆる荷物持ち。
別にそれは構わないのだ。
シンジ君は重い物を持つ必要がない。
これくらいの重さは苦でもなんでもないのだから。

ありがとう、ごめんね、と小さく笑いながらゆっくりと先を歩いて時折振り向いては柔らかく微笑む。


それは、夢で見たものと同じ…


最近のシンジ君はよく笑ってくれる。
楽しそうに穏やかに幸せそうに
僕にとって、それは何よりも愛しい事だった。

「帰りは少し散歩してから帰ろうか。丘の所」
「で、でも…食材痛んじゃうよ?」

…それもそうか。
うん、とひとつ頷いて僕はにっこり微笑んだ。

食材を家に置くと、シンジ君の手を引いて再び家を後にした。
疲れたからお茶飲んでからにしない?、と少しだけ渋るシンジ君を半ば無理やり連れて行く。

目的地は郊外にある、少し距離の離れた丘にある公園。
今朝に見た夢がまだ尾を引いているらしい。

「到着、だね」

そよそよと気持ちよい風が吹き抜ける中、芝生に腰を降ろした。
手のひらを刺激する緑の草が心地いい。
草の匂いがする。

「どうしたの、急に」

突然の僕の行動にシンジ君が不思議そうな顔をしていたが、すぐにすとん、と腰を降ろした。
僕の隣。

…なかなか良い距離だ。
すこしだけ口の端を上げて、だがそれをバレないようにさっと目元を抑えた。

「…ど、どうしたの?」
「んー…少し…眠いかな…」


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