犬タロの作文

□夏祭り―貞Ver―
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「顔だけ良くて、後は全然ダメな奴って事だよ」

心底嫌味っぽく言ってやるが、彼はボクの嫌味を嫌味とは全く思っていないらしく…
けろッとした表情で言い返してきた。

「どこが?頭良いし、パイロットとしての素質もあるし性格だって。ほら、パーフェクトじゃない」
「…自分で言うなよ。ていうか性格は良くないだろ、断じて」
「良いよ。特にシンジ君には」
「どこが!!」
「えー、良いよ。優しいし頼りになるし」
「良く言うよ」

あー、もう。
何言っても無駄だ。

…はぁ、と小さくため息をつくとTシャツの袖を軽く引っ張られた。

「そんなことより、綿菓子!綿菓子食べたい」

綿菓子と書いてある屋台を指差しながら彼が言う。
…てか、綿菓子って……。
子供みたいだな…コイツ。

「…残さないでちゃんと食べれるの?」

そう尋ねると、彼は本当に小さな子供みたいな笑顔で大きく頷いた。

「食べれる食べれる♪ほら早く。犬のが欲しい、犬の奴」
「…も〜」

ぐいぐいと手を引かれながら思う事…。
…ボクってホント、甘いよね……――






夏祭りだけでなく、こういったイベント事には滅多に参加しないボクだったが今日は案外楽しかった。
基本的に人ゴミは苦手なんだけど、散々連れ回してくれる奴が居てくれたお陰でそんなに気にならなかったしね…。

ミサトさんに"必ず買って来い"と言われたたこ焼きもイカヤキも焼きそばも全部買ったし(帰りにビールを買うという使令が残っているけど)。

え、彼?

あぁ…、彼もそれなりに楽しんでたよ。
射的で訳のわからない景品ばかり取ってた。
飼えもしないのに金魚すくいに夢中になったり(その大量の金魚をどうするのか聞いたら彼はニヤッと笑って悪戯に使う…とだけ答えた)。
水風船振り回して(ボクはやめろって言ったんだ!)近くを歩いていた人にぶつけたりとか…(もちろん猛ダッシュで逃げた)。

………一緒に居るボクは本当に疲れるだけだ。


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