犬タロの作文

□―鳥籠の中で…――
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好きだって言ってくれた人が居なくなってしまった

優しい笑顔で笑ってくれた人が居なくなってしまった

暖かい手でボクの手を握ってくれた人が居なくなってしまった




ボクが殺したから


ボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが殺したボクが…





『殺した』











ネルフ本部の地下…ずっと奥深く。
そこに、小さな部屋がある。
光も届かない…鳥籠にも似たその部屋は、一人の少年のために用意されたものだった。

カツン…カツン…冷たい足音が薄暗い廊下を渡る。
静寂の中で唯一響くその音は、一つのドアの前でぴたりとその歩みを止めた。

「………」

ドアの前に立つのは一人の少年。
何か思いつめたような…少し影を負った表情をしている。
彼は、疲れたようにふぅ…と一つため息を付くとズボンのポケットからカードキーを取り出しそのドアを開けた。


無機質な音を立てて開いたドアの向こう。
そこには見るからに殺風景な景色が広がっていた。
剥き出しのコンクリートの壁は寒々しく、部屋中を無数のコードが蛇の様に走っている。
部屋の脇には簡易的なベッドと机が置かれており、その隅にはデジタルのピアノもあった。


その中央。
部屋にある唯一の椅子に誰かが座っている。

「…やあ」

椅子に腰掛けうなだれていたその部屋の住人は、やって来た来訪者にふわり…とその表情を和らげた。

「また、来てくれたんだね」
「あ、う…ん」

その穏やかな笑顔に来訪者…シンジは困ったように目線を迷わせた。
そんなシンジに、この部屋の住人である少年は柔らかな笑みを浮かべたままシンジにゆっくりと歩み寄る。




まるで月の光のような灰銀色の髪を持つ赤い瞳の少年。
ダミーシステムを利用して造られた少年。

造ってもらったんだ…大嫌いな父さんに。


彼から造ったモノ。
大好きな人のクローン。
彼と…同じモノ。






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