犬タロの作文
□変な友達
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「シンジ君…僕の君に対する想いは、僕の全てに勝る。心の奥底から沸き上がる愛の言葉を君に伝えたい。そう願うのは、いけない事かな?」
息がかかる程に顔を近付けられて…彼の瞳に自分の姿が映っているのに気付いた。
「シンジ君…」
ボクを映したまま細められる綺麗な赤い瞳。
あ…睫毛が長い。
「…好きだよ」
カヲル君の肌って…女の子のそれよりも、ずっと白くて滑らかなんだな…。
…本当に綺麗な顔立ちをしている……。
それに、何だかすごくいい香りがして。
何の匂いだろう…、なんだか頭がぼうっとする…。
「狂おしい程に募った僕のこの想い…、君は受け入れてくれるよね…」
耳を擽るその甘い声に、ボクの思考は一気に霧が掛ったように彼しか見えなくなっていく。
優しい声…
優しい指先…
優しい笑顔…
あぁ…もう、何でもいいかもしれない…。
カヲル君は少し変だけど、…本当に素敵な人なんだ…。
そんなカヲル君が、ボクを好きって言ってくれる…それはすごく嬉しい事なんじゃないかな…。
カヲル君が一緒に居てくれる…側に居てくれる。
それでいいじゃないか。
それだけで…。
ボクだって…本当は………
本当は…――
「…うん………」
ゆっくり寄せられる唇を受け入れるように…ボクはそっと瞳を閉じる………。
そして感じたのは…柔らかな唇のかんしょ…
「『…うん………』じゃな―――い!!!」
スパァァァン!
く…ではなく、代わりに清々しい程の音と聞き慣れた声が音楽室中に響いた。
「ったぁ……って、はッ!!」
思いっきりひっぱたかれた頭を押さえたボクは、やっと理解出来た自分の今の状況に一気に血の気が引いていくのがわかった。
な、何してたのボク!!?
「うわわッ!」
慌ててカヲル君から離れ青くなったボクとは対照的に、頭を叩かれても涼しい顔のカヲル君は乱入して来た声の主に心底不満そうな視線を向けた。
「…何をするんだい、惣流…。もう少しでシンジ君と一時的接触を図れたと言うのに…」
「うるさい、この耽美男!!」
そんな視線に声の主、兼ボクらの頭を叩いたアスカがスリッパを持ったまま凄むけれど、カヲル君は平然としている。
そしてボクと言えば、二人から数歩離れた場所でバクバクとうるさい心臓を押さえていた。
「…あ、危なかった…ほんッとーに、危なかった…」