犬タロの作文
□変な友達
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だからさ…、と言い掛けたボクにカヲル君は首を傾げた。
「…何故?」
「何故って…」
聞かないでよ…そう思いながらもきちんと説明しないとわかって貰えないと理解したボクは、もごもごと口を開く。
「…だって、あの、そういうのは女の子に言うものだと思うし…彼女とか、そういう人に…」
(実際…女の子にそんな事言ってるカヲル君なんて…見たくないけど………)
そう言ったボクに、カヲル君は笑う。
「…そんな事は関係ないよ。僕の言葉は、全て心からのものだから」
にこにこしながら軽い調子で返されて、ほんの少し拍子抜けしたけれど…ボクは引き下がる訳にはいかない。
「だって…だって!いくらカヲル君がそう言ってくれても、ボクだっていつかはおじさんになるんだよ!?」
「そうだね」
「お腹とかビールっ腹になるかもしれないし、ヒゲとか生えてくるよ!?」
「そうかもね」
「いつまでも中学生で居れる訳じゃないんだ!大人になったら…ッ」
そこまで考えて、何故か胸にチクリとした小さな痛みが走った。
「なったら…」
言葉が続かない。
そう、だよね…ボク達がもっと大人になったら…カヲル君は絶対に今のような事を言ってくれなくなる。
…そして、きっとボクじゃない素敵な恋人とずっとずっと長い時間を過ごすんだ…。
「………カヲル君だって…いつかはボクを嫌いになるかもしれない…」
ぽつり、と呟くように言った自分の言葉に胸の痛みが少しだけ強くなった気がした。
「…………」
「…………」
沈黙が流れる。
『嫌いになるかも…』なんて、言わなきゃ良かったな…そんな事をぼんやりと思ったボクの思考を遮ったのはカヲル君の声。
「………それはない」
「え」
きっぱり言い切ったカヲル君は見た事もない程に真剣な表情をしていて…ボクは思わず息を飲んだ。
「僕にとって…君が僕の最愛の友人であるという事実は、永遠に変わる事はないよ。例え過ぎ行く季節が君を変えてしまっても、それだけが僕の真実…」
「カヲル…君…」
声が出なくて、ただ少しだけかすれた声で彼の名前を呼ぶといつの間にか腰に回っていた手でぐっと引き寄せられてしまう。
驚きに見開いた目でカヲル君を見つめるボクにカヲル君は優しく微笑みを浮かべた。