犬タロの作文

□刹那の羨望
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握られた右手が気持ち悪い。
伝わる体温が気持ち悪い。
ニヤニヤ笑う目の前のこいつが気持ち悪い。



「いい加減…離せよ」
出来るだけ声を低くし、不機嫌さを微塵を隠さずに言うシンジにカヲルはくすくすと小さな笑いを洩らした。

「君、ホントに嫌いなんだね」
…人の体温…

おかしそうに言われてシンジは自分の右手を掴むカヲルの手を無理矢理振り払おうとしたが力の違いのためかびくともしない。

「そうだよ、離せ!!」

精一杯の敵意を込めて睨むが、カヲルのその赤い瞳はただおかしそうに細められて…

楽しんでいる。

そう感じた。

面白がっている。

シンジの反応の全てを。

そう思うと更に怒りが込み上げて来て、シンジは左手に持っていた鞄を振り上げた。
しかし、それは簡単に避けられシンジはバランスを崩してしまう。

「ッわ」
ぶつかる!

そう思っていたのに、感じた感覚は全く違うものだった。
一瞬、何が起きたかわからなかったが状況を理解した瞬間…ざわざわと嫌なものが腹の底から沸き上がって来るのを感じる。


頭と腰に回された手の感触。
目の前の白いシャツ。
伝わる体温。
大嫌いな、人の匂い。


「危ないよ」
聞こえて来た特に心配の色も込もっていない声に、シンジは思いきりその体を突き離した。

「…ッ、と」
突然の事に、カヲルの体が数歩シンジから離れる。
「ホントに危ないな…何すんのさ」
不満そうな口ぶりのカヲルをシンジは思いきり睨み付けた。
「何するはこっちの台詞だ!」
嫌悪に満ちたその眼差しは力強いのに、その体はまるで寒さに耐えるかのように小刻みに震えている。

「ただ守ってあげただけだよ」


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