犬タロの作文

□未完のメロディ
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冷たい瞼の裏で、僕が見つからない。
破壊のために生まれた、この確かな記憶さえ…揺らいでいく。
何故生まれたのか
何故ここにいるのか

虚無にあえぐこの胸は、埋められる何かを誘い歌を紡ぐ。
自分の声では
自分の手では
この冷たい闇を拭えない。

忘れられた
後悔も罪も愛も
何も僕は持っていない。
そんな中で君に出会えた。
後悔も罪も愛も
全て抱え込む小さな君を見つけた。
痛い…と感じた。
君の心が痛いと泣いていた。
抱き締めたいと思った。
愛したいと願った。


さ迷う心をもてあます僕に甘い囁き。

「ここに居てもいい?」

扉の前で少し震えて
僕の心に忍び込んだ。
出口なんてない闇の中に。


置き去りにする
後悔も罪も愛も
君に痛みしか残さない。
君の涙にしかなりえない。

それでも君は、僕が好きだと笑ってくれる?

忘れ去られた
真実も嘘も傷も
今は僕の中にある。

裏切りと愛と希望に
痛いと叫ぶ君が愛しくて堪らない。
心の闇は今や晴れ、君の涙が白く光る。
痛い、痛い、痛い。
君の涙が痛い。

君に出会わなければ僕は空っぽのまま逝けた。
僕に出会わなければ君の今の涙は無かった。
けれど、心の闇はそのままだった。


「愛してる」
声に出さずに囁いた言葉に、君の涙は輝いて
散りばめられた星のように。
過去も罪も未来も
君の全てを愛したいから
永遠に愛していたいから

手に入れた僕は君に消される。
それはなんて甘美な夢。
君の手にかかることで僕は永遠になれるから。
君の永遠に。

愛しさに満ち溢れたこの胸は、今はただ光に満ちていく。

君の声で
君の手で
永遠を…

この胸伝う
涙を、歌う。



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