犬タロの作文
□キレイなヒト
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ボクがそう言うと、カヲル君が視線をボクに向けた。
薔薇よりも赤いその瞳にボクの姿が映る。
「…僕が好きなのは君だけなんだけど」
真剣にそう言われてボクの頬がかぁっと赤くなった。
誰よりも綺麗な彼が、誰よりも綺麗なその瞳に映すのはボクだけ。
どうしようもない優越感がボクを支配する。
なんだか恥ずかしくて、不意に目線を外すとぐっとソファに押し倒されてしまった。
「カヲル…君?」
手の中にあった花束が今度は床に落ちる。
ああ、また花びらが散ってしまうかな…そんな事をぼんやり思ったら目線を無理矢理合わされた。
「…僕が好きなのは君。君以外の人に好かれても嬉しくない」
…はっきりいうなぁ…。
「…ふふ」
何だかおかしくてボクがくすくす笑うとカヲル君は不思議そうな顔をした。
「…どうしたの?」
「ん?カヲル君の髪…綺麗だなぁって…夕日に透けて金色に見える…」
誤魔化してるような言い方になってしまったけど、カヲル君の髪が綺麗だと思ったのは本当。
灰銀色の髪が、窓から差し込む夕日に透けてキラキラと黄金色に輝いていた。
指を絡めればさらりと流れるその髪は、まるでそれ自体が光の束のように見える。
「そう?」
「うん…すごくきれー…」
うっとりとボクが囁くと、カヲル君は嬉しそうに目を細めた。
「これ全部、シンジ君のだよ」
「え?…ッ…」
カヲル君の声が聞き取れなくて、ボクがカヲル君を見つめるとそのままそっとキスをされた。
だんだんと深くなる口付けを受け入れながら、ボクは唇が重なる瞬間に言われた言葉に…やっぱり…どうしようもない程の優越感を感じてしまうのだ。
『僕の全ては、…君のモノ』
そう…カヲル君を好きな女の子達には悪いけれど、
どんな贈り物をされたって…
どんなにお願いされたって…
この綺麗な人は、全部全部…ボクのモノ。
絶対誰にも…渡さない。