犬タロの作文

□キレイなヒト
2ページ/5ページ

学校では毎日のように女の子に追いかけられてるし、ラブレターやプレゼントなんかもよく貰う(というか押し付けられてる)。
帰り道では近所の学校だけじゃなく見知らぬ学校の子達や綺麗な女の人とかにも声をかけられたりするし。
出掛けるとなると、いわゆる逆ナン…と言うのにもよく合うんだよなぁ。

「…モテモテだね」
「迷惑だよ」

からかうようにボクが言うと、カヲル君は不機嫌そうにため息をついた。
そして、買って来たお豆腐をボクに渡すとただ黙ってリビングへと足を進める。

「その花、どうするの?」
「捨てる。いらないから」

ボクが尋ねると彼は花束をテーブルにぽいっと投げ捨てソファにもたれかかった。

「もったいないよ、こんなに綺麗なのに」

無造作に投げ捨てられた花束にボクはなんだか切ない気持ちになってしまった。
きっと…この花束を渡した子は今頃カヲル君に受け取って貰えたことをとても喜んでいるんだろう。
…カヲルに恋する子の気持ちは、ボクにはよくわかる…。

今は子供みたいに眉間に皺を寄せて、不機嫌そうに唇を尖らせているけど普段の彼は本当に綺麗だから。

まるで作られたように整った美しい顔立ち。
雪みたいに白い、傷やシミなど何一つない肌。
吸い込まれそうな赤い瞳と流れるように穏やかなその物腰。
カヲル君は文句なしの美人さんだ。

(…そんなカヲル君と恋人同士なんだからボクって贅沢だよな…)

少しだけ頬が赤くなって、ボクはお豆腐の入った袋をぎゅっと抱き締めた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ