犬タロの作文
□愛の歌
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「ねぇ、カヲル君…カヲル君は…ボクの事…好き?」
柔らかなその声に、出来得る限りの笑顔で僕は微笑む。
「…好きだよ…愛している」
誰よりも、何よりも愛しいよ…。
それは僕の本心。
心からの言葉…。
けれど、それすら君は…
「……嘘だ」
否定するんだね。
「カヲル君も…どうせボクなんか好きじゃないんだ…ねぇ、そうなんでしょ?カヲル君は優しいもの…。ボクが可哀想だから一緒にいてくれるんでしょ?」
微笑みながら言う彼に、僕は首を横に振る。
「…違う…僕は君を愛してる」
言葉に込めるのは、精一杯の誠意。
でも…そんなもの今の君には届かない。
「…嘘だ!!ボクが愛される訳ないもの!だって、みんな…みんなボクの事を蔑むような目で見るんだ。哀れむような目で見るんだ。…カヲル君も、同じ目をしているんだね…」
笑う君の頬に流れるのは涙。
「はは、そうだよね…こんなボクだもんね…父さんも、嫌いになるよね…母さんだって…」
「…ッ」
まるで宝石のように輝く涙を流し続ける彼を、僕は引き寄せて強く抱き締めた。
少しでも、彼の孤独に満ちた心が癒されるように。
少しでも、彼の孤独が和らぐように。
「愛して…ねぇ、カヲル君…ボクを愛してよ…」
すがりつくように背中に回される細い腕に、耐えがたい程の切なさが込み上げる。
「愛しているよ」
まるで歌を歌うかのように愛の言葉を囁きながら、僕は彼の体をきつくきつく抱き締めた。
想いを込めて
願いを込めて
信じて…
僕の言葉を
信じて…
僕の想いを
本当に僕は…君を愛しているから…。
それでも君は、ただ悲しげに笑うだけ。
「…嘘だよ…カヲル君…」
ああ、何故?
何故…君は………