犬タロの作文

□愛の歌
2ページ/3ページ

「ねぇ、カヲル君…カヲル君は…ボクの事…好き?」

柔らかなその声に、出来得る限りの笑顔で僕は微笑む。

「…好きだよ…愛している」
誰よりも、何よりも愛しいよ…。

それは僕の本心。
心からの言葉…。


けれど、それすら君は…

「……嘘だ」

否定するんだね。


「カヲル君も…どうせボクなんか好きじゃないんだ…ねぇ、そうなんでしょ?カヲル君は優しいもの…。ボクが可哀想だから一緒にいてくれるんでしょ?」

微笑みながら言う彼に、僕は首を横に振る。

「…違う…僕は君を愛してる」

言葉に込めるのは、精一杯の誠意。
でも…そんなもの今の君には届かない。


「…嘘だ!!ボクが愛される訳ないもの!だって、みんな…みんなボクの事を蔑むような目で見るんだ。哀れむような目で見るんだ。…カヲル君も、同じ目をしているんだね…」

笑う君の頬に流れるのは涙。

「はは、そうだよね…こんなボクだもんね…父さんも、嫌いになるよね…母さんだって…」
「…ッ」

まるで宝石のように輝く涙を流し続ける彼を、僕は引き寄せて強く抱き締めた。
少しでも、彼の孤独に満ちた心が癒されるように。
少しでも、彼の孤独が和らぐように。



「愛して…ねぇ、カヲル君…ボクを愛してよ…」

すがりつくように背中に回される細い腕に、耐えがたい程の切なさが込み上げる。


「愛しているよ」


まるで歌を歌うかのように愛の言葉を囁きながら、僕は彼の体をきつくきつく抱き締めた。


想いを込めて
願いを込めて

信じて…
僕の言葉を
信じて…
僕の想いを

本当に僕は…君を愛しているから…。

それでも君は、ただ悲しげに笑うだけ。


「…嘘だよ…カヲル君…」


ああ、何故?
何故…君は………



次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ