ニャンコの作文

□夢の欠片に…――
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夢を見ていたんだ。

それは、とても優しくて…。



とても 『悲しい夢』



「もう起きて下さいー。朝ご飯ですよ」

瞼から透き通る光に徐々に眠っていた意識が浮上していくと、困ったような小狼くんの声が聞こえた。
そういえば、先程から何度も何度もオレの名前を呼んでいたような気もしないでもないような…。

「起きたくれた?」

キィ、と小さな軋みを立てて開いたドアから聞こえるこれはサクラちゃんの声。
ぱたぱたとベッドに近付くスリッパの音も耳に届く。

「まだ、です…」
「疲れてるのかしら?」

うーん、と悩む二人の声に何だかとても温かい気持ちになって。
オレはくるまった毛布の中でバレないようにくすくすと小さな笑みを零した。

…本当に、なんて可愛い子供達なんだろう。
温かくて穏やかで優しくて…そして愛しい。

もう少しだけ困らせてみようか、と狸寝入りを続けていたかったが、それはぴょこーん、と飛びついて来た白いふわふわによって断念せざる得なくなってしまった。

「朝ご飯できたよぅ♪ 起きてぇ〜★☆」
「わッ!」

突然の事に飛び起きたオレに全開にされているらしい窓から吹き込む新しい風が吹き付け、先程までぬくぬくと毛布にくるまれていた体を一気に冷やす。
ぶるり、と一瞬震えて次に目に入ったのは驚いたような小狼くんとサクラちゃんの顔。

「起きてたんですか!?」
「酷いですよ、何度も起こしに来たのに!!」
「あはは、ごめんね」

むー、と頬を膨らませる二人に謝って、ベッドから下りる。
そうすると開いたドアから黒鋼が呆れたような顔でこっちを見ていたのに気が付いた。

「何やってんだ、てめぇら」
「あ、黒鋼さん」
「おはよー黒たん♪」

へらん、と笑って手を振るオレに、いつものようにはぁ…とため息をつく。


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