ニャンコの作文

□a string
1ページ/6ページ


『オレを殺すの?』


嘲るようなその声に反応するように、自分の手がその細い首に掛かる。
触れた白い肌は吸い付くように滑らかだ。
けれど、死人のように冷え切ったその体温にぞくりとする冷たさを覚えた。


『殺してくれるの?』


暗い色の床に異質な程に輝く金が目に痛い。
抵抗する気配すら見せない手は力無いまま開かれていた。


『ああ…、殺してやるよ』


自分の声とは思えない程に愉しげな声が響く。
ゆっくり掌に力を込めると微かに動いた薄い唇が微かな笑みを作り出し、宝石のように冷たい輝きを持つ蒼い瞳が微かに瞬いた。



墜ちる、墜ちる

細く白い、蜘蛛の罠


絡め取られて…やがて身動きが取れなくなる






弾けたように開かれた視界を支配するのは漆黒の闇だった。

(…なんだ…今の夢は…)

はっきりと記憶に残る情景に微かに息が乱れる。
浮かんだ汗に前髪をかきあげ不意に横に目線を移した瞬間、暗闇の中でもわかる氷の欠片の如く薄い蒼の瞳が此方を見つめていた。

「悪い夢でも見た?」
「………」

驚きに目を見開いた黒鋼の表情に薄い蒼は可笑しそうに細まり、からかうような声が暗闇に溶けた。

「一体なんのつもりだ、テメェ」
「えへへ―、だってさぁ」

自分にあてがわれた寝台の上に自分と同じように寝そべる男。
静かな怒りを隠しもせずただ強く自分を睨み付ける紅い瞳に、薄い蒼の持ち主であるファイはいつものように力の抜けた笑みを浮かべ黒鋼の頬に指先で触れる。

「…うなされてる黒様がスッゴい色っぽかったから―」

その指先が頬に触れた瞬間、ぞくりとした悪寒が背筋を走った。

夢の中の…あの時のように…――

「触るな」
「え―、恥ずかしがり屋さんだねぇ」


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ