ニャンコの作文
□夢囚
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君と、『殺し合う』 夢を見た。
「――ッ!」
自分が声にならない悲鳴を上げた声で目が覚めた。
勢いよく見開かれた目は暗闇の先の天井を映し出す。
ゆっくりと息を吐き出すとヒューヒューと掠れた音が耳に届いた。
呼吸をしている、まだここにいる
ようやく気が付いてようやく、あぁ…あれは夢だったのだと安堵した。
微かに首を動かし、目線だけで部屋の中を確認する。
また新しく訪れた世界…サクラ姫の羽と思われる噂がある街…そこで取った宿の一室。
「…」
腕を付いて起き上がるとぐったりとした疲労感が襲ってくる。
首筋から胸元、額も体中がじっとりと汗ばみ気持ちが悪い。
喉もからからに渇いていた。
ベッドの脇に備え付けられていた小さなランプのスイッチを手探りで入れ、もう一度ゆっくり部屋の中を見渡すと向かいのベッドで眠りに付く少年の姿が見える。
けれど、もう一人。
この部屋に居るはずの姿が見当たらない。
確かに居るはずなのに。
あれは夢だったのに。
ファイは首を滑るように流れ落ちた汗にぞくりとした感覚を覚えた。
汗で張り付く髪の感触が不愉快で堪らない。
…嫌な…そう、嫌な夢を見た。
思い出すだけで吐き気がする。
震えが止まらない。
(黒様…)
ここにはいない彼の姿を思い出そうとする。
瞬間、脳裏に浮かんだのは血にまみれた白銀の刃と……
「―――ッッ」