ニャンコの作文
□Smoking
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真っ青な空の色に誘われて。
間近に迫ったテストの問題作成もそこそこに屋上へと登ってみると、何処か懐かしいその香りがファイの形のよい鼻を刺激した。
あれ? と思いくるりと辺りを見渡すとちょうど今入って来た扉の右側からゆらゆらと漂う煙が見える。
只今の時刻は三時限目の真っ最中。
多分授業をサボっている生徒達だろう。
こんないい天気なのだから外でのんびりしたい気持ちはわかるし(ファイ自身も正直サボっているようなものだ)、本来なら見逃してやりたい所だが…この香りと煙。
(未成年者の喫煙はー…ってやつかな)
一応自分は教師なので注意くらいはやっぱりしないといけないだろう。
「こーらー、何してるのー?」
「げ、ファイ先生!」
ひょこりと顔を覗き込ませるとやはりファイの思った通り。
数人の男子生徒が、ジュースの空き缶を灰皿代わりに呑気に一服中だった。
「ダメでしょー。こんな所でー」
生徒指導の先生に見つかったら大変だよ? そう言いながら数人のうちの一人が手にしている煙草が入った箱を取り上げて、ファイは深いため息をついた。
「今回は見逃してあげるけど、次見つけたら怖いからねー」
穏やかな声で言葉を紡ぐ緩やかな唇とは対象的に、その蒼い瞳が氷の如く冷たく細められているのに気付いた生徒達は早々と片付けを始めいそいそとファイの横を通り過ぎていく。
「ちょっと待った」
「え」
「ポケットの中身。全部没収♪」
にこり、と笑ってその手を差し出したファイに生徒達は一瞬だけ嫌そうに顔を歪めた。