ニャンコの作文
□kiss of love.
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君の全てが、オレを煽る
桜都国に着いて、手に入れたその服はどうやって見てみても着方が全くわからなかった。
けれど、その服を黒鋼に渡してみると彼は手慣れた手付きで簡単にそれを纏っていく。
「黒ぷー、カッコイ――」
すっかり着替え終わった黒鋼をしげしげと眺めながら、ファイはぱちぱちとその手を叩いた。
「それって、そう着るんだね――」
"袴"という名の衣服だと店の女性が教えてくれた気がする。
ずいぶん不思議な形の服…そう感じて、すっと黒鋼の襟元へ腕を伸ばした刹那
昨夜の情景が脳裏を霞めた。
消えない悦楽
熱い唇
…オスの気配
オレを貪る、獣の匂い
(…ダメだなー、オレってば)
ぞくぞくと背中を這い回るような感覚に少しだけ自嘲的な笑みを洩らし、ファイは黒鋼の服をぎゅうっと強く掴んだ。
「ねー黒たん…」
「あぁ?」
不機嫌そうに見下ろしてくる黒鋼に向かい顔を上げて、へにゃんと首を傾げる。
「ちょーっとキちゃった」
「………」
「少し、付き合ってー?」
ファイの声に含まれた色香に、黒鋼はいぶかしげに眉を潜めた。
「…あいつらどうすんだよ」
サクラ姫はまだ寝ているが、小狼はもう着替え終わっている頃だろう。
もっともな黒鋼の言葉に、ファイの口元には更に艶やかな笑みが浮かんだ。
「平気でしょー?」
少しくらい遅れても…――
妖しい微笑みを浮かべたままそう呟いた細い指先が、己の首元に伸び…するりとタイをほどく。
「ちょっとだから、ね? キスだけー」
指先に絡まる紅いタイが音と立てずに床に落ち、ファイの澄んだ蒼が細められた。
「…お願いー、黒様…」
誘うようにねだるように、唇を薄く開けば後頭部に大きな手が回されて強引とも云える強さで引き寄せられる。
「…ん…」