犬タロの作文

□birthday
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シンジは困っていた。
そりゃあもうかなり困っていた。
例えるなら、興味以上の気持ちを抱いていた謎の美少女のクローン体が地下でぷかぷかとたくさん浮いている(爆)なんていう事を知った時以上に困っていた。

「…どうしよう…」

ぽつり、と零した声は暗く沈んでいて、今彼が居る場所には全くと言っていい程に似つかわしいものではない。

彼、碇シンジの現在居る所。
それは…最近評判の『ファンシーショップ』。
つまり、可愛いものいっぱいの乙女ちっくな女の子向けのお店である。
ふわふわのぬいぐるみや可愛いキャラクターの雑貨達に囲まれながら、シンジはふぅ…と小さなため息をついた。

「…こんなんじゃ…ダメだよね」

しゅん、としょげたようにうなだれるシンジだがその手に存在するのは実に可愛らしいウサギさんのストラップ。

(…何でボクはここに居るんだろ…)

14歳の男子中学生が一人でファンシーショップに居るなんて…。
悲しすぎるよ…

うなだれるシンジだが、実際にはあまり違和感はない。
むしろ店員のお姉さん達は実に微笑ましい瞳で彼を見守っていた(笑)

「何か探してるの?」
「え!!?」
「誰かにプレゼントかしら?」
「は、はい…誕生日の…」
「お手伝いしましょうか?」

にこにこと満面の笑みで声を掛けて来た店員に、戸惑いながらもシンジはおずおずと頷いた。

…本当なら、ちゃんと自分で選びたいのだけど…

それを叶えるにはもう時間がない。

「どんな物を探してるの?」
「えっ、と…まだ決まってなくて…」

本当は1ヶ月以上前から何件も店を回り回って、その日のためにプレゼント選びに奔走していたのだがなかなか納得出来るものが見つからず…ついに今日を迎えてしまったのだ。


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