犬タロの作文

□ひざまくら
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夢を見たんだ。
いつの夢かはわからないけれど。

夢は人の記憶から作られるのだから、もともとの記憶がなければ見ないはずだ。

僕には、その"記憶"と呼ばれるものがないのに。
何故だろう。
僕にあるのは、君の…君への…―――



「…あ、れ…」

朝の光で目を覚ましたけれど、正直まだ目を覚ましたくなかった。
一度上半身を起こしたが軽い目眩を感じて、僕はすぐにまた横になる。

夢の続きが見たかったから

なんせ、とても良い夢だったのだ。
目を覚ますには勿体ないくらいの。


『カヲル君』


透き通るくらい清らかな甘い声。
聞いているだけで甘い味がしそうなあんなに可愛らしい可憐な声を僕は他に知らない。

その声で、僕を呼んで…
はにかんだ優しい笑顔を浮かべるのだ

彼は…―――




「シンジ君、決まったかい?」

そして、今僕はシンジ君の買い物に付き合っている。
いや…付き合うというと語弊がある。
今シンジ君が選んでいる食材を口にするのは僕とシンジ君の二人なのだから、その買い物を二人でするのは当然のことだと思うのだ。

「あと少し。ごめんね、カヲル君」

今度はあっち、とシンジ君が指差す先には季節の果物の山があってとても美味しそうに熟している。

「いいよ。行こう」

既に僕が持つ買い物カゴには、パンや牛乳やチーズや色々なものが入っている。
今、彼が気に入っている外国のスパイスなんてものもある。


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