犬タロの作文

□白い花
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学校に行く途中。
なんだかすごく可愛い花を見つけた。

白くて細っこくて、すぐ折れちゃいそうなのに強い風に吹かれてもゆらゆら静かに揺れている。
なんだかシンジ君みたいだなって思った。

だって僕が思う可愛いは全部、シンジ君とイコールで結べるものだから。


弱いけど強い。
静かだけどちゃんとそこに居る。


そう思ったらますます気に入ったから、僕はそれに"シンジ君"って名前を付けた(本人に言ったら怒られるから言わないけど)。

そして本当はもっと花の"シンジ君"を眺めていたかったけど、これ以上遅れると本物のシンジ君に叱られるから渋々その場を後にした。
帰りにまた来るからね、と言い残して。

だけど午後になると急に雨が降り始め、僕は白い花の"シンジ君"がだんだん心配になって来た。

風は平気そうだったけど雨はやっぱりよくないんじゃないかな。
大丈夫かな?大丈夫かな?

やっと放課後になって、急いで走ってそこに行ったみたけれど…見つけた花はやっぱり雨に濡れて悲しそうにうなだれていた




「…何してるの?」
「…」

帰り道。
傘も差さずにしとしとと降り続ける雨に濡れたまま小さな野花を見つめているカヲルを見つけたシンジは、ものすごく変だと思いながらも声を掛けてみた。

「何してるの、って聞いてるんだけど」
「…別に」


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